「前歯が逆に噛んでいる」と言われたら ~放っておいて大丈夫?そのままにするリスクと早期相談のポイント~」
こんにちは。茨城県石岡市・小美玉市・かすみがうら市の矯正歯科医院、石岡みらい矯正歯科・院長の丸岡亮です。
お子さまの前歯が、下の前歯が上の前歯より外側(前方向)に出ている状態(前歯部反対咬合)と言われたご家庭から、よく歯並びのご相談をいただきます。
今はまだ子供の歯が残っている時期(混合歯列期)なので、成長とともに自然に治るかもしれませんが、このまま様子を見て大丈夫でしょうか?というご質問もよく受けます。
まだ成長期だから、永久歯が生え揃ってからでも大丈夫と思われる保護者さまも少なくありません。
これらは状況によって変わってきます。
本日は、成長期の方の前歯部反対咬合についてお伝えできればと思います。
1.混合歯列期の前歯部反対咬合とは
前歯部反対咬合とは、上顎前歯が下顎前歯の前方に出るべきところ、逆に下の前歯が前に出ている状態を指します。
混合歯列期でも比較的見られる歯並びで、文献によれば頻度はおおまかに10%前後という報告もあります。

↑ 下の前歯が前に出ている状態を指します
2.原因:骨の問題と歯の位置の問題
前歯部反対咬合が起こる原因は複数ありますが、大きく「骨格の問題」と「歯そのものの位置、傾きの問題」に大別できます。
① 骨の問題
上顎の骨と下顎の骨の大きさのバランスによって生じているパターンです。
・上顎の骨の発育が小さくで、上顎前歯が後ろにある状態
・下顎の骨の成長が大きく、下顎前歯が前へ出てしまっている状態
・その2つが組み合わさった状態
詳しくは頭部X線規格写真(セファログラムグラム)により大きさを分析します。
見た目にも影響が出ることもあります。

↑ 下顎が発達し、咬み合わせが反対になっている状態
② 歯性・機能性の問題
これは主に、上の前歯が何らかの理由で、内側から生えてしまった、または内側に傾いてしまっている場合が当てはまります。
そして、内側から上の歯が生えてくると、かみ合う時に邪魔になります。そのため、それを避けるように下顎を前に出して咬んでいる場合があります。これを機能性の反対咬合と呼びます。
特に上記の歯の問題の場合、上の歯に大きい負担がかかっている場合もあり、また機能性の反対咬合の場合は、それが骨格性に移行したり、また本来の位置からずらして咬んでいるため、顎の関節に影響が出ることもあります。

↑ 上の前歯が内側に傾斜している状態。避けようとして下顎を前に出していることもあります
反対咬合は「歯だけのズレなのか」「骨格の問題も含んでいるのか」を見極めることが重要です。
3.いつ頃、相談・受診した方が良いか
以下のような様子があれば、まずはかかりつけの先生に相談をおすすめします
上の前歯と下の前歯が「逆」に咬んでいて、本人が気にしている(コンプレックス)
反対咬合の歯が1歯または複数歯で見られる
顎が横にずれている・顔の左右差などがある
下の前歯の歯ぐきに退縮の傾向がある
保護者が「このままで大丈夫か?」と不安に感じている
4.いつから治療が始まるのか
矯正歯科クリニックでのは、いつからスタートすべきか、まずは経過観察でよいか、早期介入すべきかの判断は、顎の成長予測・歯の萌出状態・癖や習慣の有無・検査データ(模型・レントゲン・咬合)を診査診断して決めていきます。
必ずしもすぐに始める必要はありませんが、早期の治療がメリットが大きい場合は、そのご提案があるはずです。
5.Q & A
Q1. 「1歯だけ」前歯が反対咬合になっている場合、自然に直ることはありますか?
A . 残念ながら、「自然に必ず直る」という保証はありません。文献でも「交叉咬合(前歯・側方含む)は自然治癒は稀」という記載もあります。 ただし、歯性の軽度なもので、十分なスペースがあり、癖がなく、顎成長にも問題がないと判断されれば「まず観察」でよいケースもあります。その際も「いつまで様子を見るか」を明確にしておくことが大切です。
Q2. もし骨格性の問題(下顎前突傾向)があると診断されたら、どうなりますか?
A . 骨格性要素が強い場合、成長発育が進むにつれて反対咬合が固定化・進行することがあります。成長期後(成人期)に治療する場合は、矯正装置+場合によっては外科治療(顎矯正手術)を併用せざるを得ないこともあります。開始時期について、担当医とよく相談をしてみるのをおすすめします。
Q3. この反対咬合を放置すると、どんなリスクがありますか?
A . 主なリスクとしては:
前歯部および下顎前歯部の歯ぐき退縮・上の前歯の歯根と呼ばれる歯の根っこが短くなる歯根吸収リスク増加・顎関節への影響などが考えられます。

↑ 押し出された下顎の前歯は歯肉が下がってしまうこともあります
また、思春期には見た目・心理面への影響(コンプレックス)が出ることがあります。

↑ 咬み合わせを気にして、人前で笑えない、という方も出てきます
6.まとめ
・混合歯列期に「前歯が逆に噛んでいる(前歯部反対咬合)」と指摘された場合、放っておけば治るという保証はなく、むしろ早期の「診断と成長観察+場合によっては介入」が推奨されています。
・原因には「骨格性」と「歯性」あるいは「癖・習慣」があり、これらを的確に診断することが重要です。
・「いつ相談すべきか?」という点では、上下の前歯が萌出した時点でのチェックが適切です。かかりつけ歯科医院または矯正歯科医院の受診をおすすめします。
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List of probably useful references
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