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矯正治療中の就職活動の影響は?ワイヤー矯正と面接、装置の見た目や滑舌について

 

矯正治療と就職活動について

 

こんにちは。
茨城県石岡市、小美玉市、かすみがうら市、笠間市、土浦市からも通っていただいている矯正歯科、石岡みらい矯正歯科・院長の丸岡です。

大学生や社会人の方から、矯正治療と就職活動についてご相談をいただくことがあります。

大学に入学してから、以前から気になっていた歯並びを治したいと思い、矯正治療を始める方は少なくありません。一方で、矯正治療は数か月で終わる治療ではないため、就職活動の時期にまだ装置がついていることもあります。

また、社会人になってから矯正治療を始めた方が、治療中に転職活動を行うこともあります。

そのようなときに、「面接でワイヤー矯正が見えると不利になるのではないか」「装置がついていると印象が悪くならないか」「接客業を目指している場合、矯正治療中でも大丈夫なのか」と心配される方もいらっしゃいます。

矯正治療は、将来の歯並びやかみ合わせ、口元への自信につながる治療です。しかし、治療中は一時的に装置が見えたり、話しにくさを感じたりする時期があります。

今回は、矯正治療中の就職活動について、ワイヤー矯正は面接で不利になるのか、装置の見た目や滑舌はどのように考えればよいのか、治療を始める時期はどう相談すればよいのかを、矯正歯科の立場から整理してみたいと思います。

 

 

はじめに:結論

 

結論からお伝えすると、矯正治療中であることや、ワイヤー矯正の装置がついていることだけで、就職活動が大きく不利になるとは考えにくいです。

一方で、就職活動では面接があります。面接では話し方、表情、清潔感、第一印象なども見られます。そのため、装置が気になってうまく笑えない、話しにくい、滑舌が不安という場合には、矯正装置そのものではなく、面接時の印象やご本人の自信に影響する可能性があります。

特に、人前で話すことや接客が多い職種を目指す方は、治療を始める時期や装置の種類について、少し早めに相談しておくと安心です。

 

 

転職活動中に矯正治療をしている方もいます

 

矯正治療は学生だけのものではありません。近年は、20代、30代、40代以降の方でも矯正治療を希望される方が増えています。矯正治療は長期的な治療ですので、治療期間中に受験、就職活動、転職活動、結婚式、引っ越しなどのライフイベントが重なることはよくあります。

また、社会人になってから、仕事に少し慣れてきたタイミングで歯並びを整えたいと考える方もいます。また、営業職や接客業などで人と話す機会が多く、口元の印象が気になって相談される方もいます。転職活動を予定している方が、面接の時期と矯正治療が重ならないか心配されることもあります。

転職活動では、これまでの経験や実績、人柄、コミュニケーション力が重視されます。矯正治療中であること自体が、転職活動において明確なマイナスになるとは考えにくいです。

ただし、面接直前に装置をつけたばかりで話しにくい、痛みがあり表情が硬い、口元を気にしてしまい自然に話せないという場合には、面接で本来の自分を出しにくくなることがあります。そのような場合は、治療そのものよりも、治療のタイミングや装置に慣れる期間の取り方が大切になります。

 

 

 

ワイヤー矯正は就活で不利になるのでしょうか

 

患者さんから、就活中にワイヤー矯正をしていると不利になりますか、面接で印象が悪くなりますか、というご相談を受けることがあります。

まず、公開されている一般的な採用情報や公的な考え方から見ると、矯正装置の有無だけで採否が決まるというルールは確認できません。厚生労働省も、採用選考は応募者の適性や能力に基づいて行うことが大切であると示しています。つまり、矯正装置がついているという理由だけで不利に扱うことは、公正な採用選考の考え方とは一致しにくいと考えられます。

ただし、ここで注意が必要です。実際の採用面接では、企業ごとの考え方、職種の特性、面接官の印象、企業文化などが関係します。矯正装置がどの程度影響するかを、すべての企業や職種について断言することはできません。

たとえば、事務職などでは、ワイヤー矯正の装置がついていること自体が大きな問題になる可能性は低いと考えられます。一方で、営業職など、笑顔、発音、清潔感、第一印象が特に重視されやすい職種では、装置の見た目や話し方が気になる方もいるかもしれません。

ここで大切なのは、ワイヤー矯正だから就活に不利と決めつけないことです。むしろ、装置を気にしすぎて笑顔が少なくなる、話すときに口元を隠してしまう、自信がなさそうに見えることの方が、面接では影響しやすいと思います。

 

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装置が気になって自信を持てないこともあります

 

 

矯正治療中の就職活動で、実際に問題になりやすいのは、装置そのものよりも、ご本人の気持ちの部分です。

面接で笑ったときに装置が見えるのが気になる。写真撮影で口を開けて笑えない。グループディスカッションで話すときに口元を見られている気がする。こうした不安があると、自然な表情や話し方が出にくくなることがあります。

歯並びや口元は、見た目だけではなく、心理面にも関係します。不正咬合や歯の見た目が、口腔関連QOLや自己評価に影響することを示した研究もあります。また、矯正治療後に口元への満足度や生活の質が改善する可能性も報告されています。

つまり、矯正治療は長期的には自信につながる可能性がある治療です。一方で、治療中は一時的に装置がついたり、話しにくさを感じたりする時期があります。その時期が就職活動と重なる場合には、あらかじめ対策を考えておくことが大切です。

 

 

 

 

滑舌や発音が気になる場合もあります

 

 

矯正装置の種類によっては、話し方に影響することがあります。

特に、裏側矯正、上あごに装置がつくタイプの矯正装置、拡大装置、リテーナー、マウスピース型矯正装置などでは、一時的に発音しにくいと感じることがあります。文献的にも、舌側矯正装置や口蓋部に関係する装置では、発音への影響が報告されています。マウスピース型矯正装置でも、装着直後に話しにくさを感じる方がいます。

ただし、多くの場合は、時間とともに慣れていきます。最初はサ行やタ行が話しにくいと感じても、数日から数週間でかなり自然に話せるようになる方も多いです。

一方で、就職活動の面接、プレゼンテーションなど、話すことがとても重要な予定がある場合には、装置をつける時期や調整日を考える必要があります。たとえば、大切な面接の直前に新しい装置を入れると、違和感や痛みが出る可能性があります。そのような場合には、面接日程が分かっている段階で担当医に相談しておくことをおすすめします。

 

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装置の種類を選ぶこともできます

 

 

就職活動の時期が近い方は、矯正装置の種類についても相談してみるとよいと思います。

ワイヤー矯正には、金属のブラケットを使用する方法だけではなく、白いブラケットや白いワイヤーを使用して目立ちにくくする方法があります。また、症例によってはマウスピース型矯正装置が選択肢になることもあります。さらに、上の歯だけ裏側に装置をつけるハーフリンガル矯正など、見た目に配慮した方法もあります。

ただし、見た目だけで治療方法を決めることはおすすめできません。歯並びやかみ合わせの状態によって、適した装置は異なります。マウスピース型矯正装置が向いている場合もあれば、ワイヤー矯正の方が確実に治療を進めやすい場合もあります。裏側矯正は見た目の面では優れていますが、発音への影響や違和感が出やすいこともあります。

大切なのは、就職活動の時期、希望する職種、歯並びの状態、治療期間、装置の見た目、発音への影響を総合的に考えることです。

 

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就活前に矯正治療を始める場合の考え方

 

 

就職活動が近い方の場合、治療開始のタイミングはとても大切です。

たとえば、就職活動までまだ1年以上ある場合には、早めに治療を始めることで、面接の時期には装置に慣れている可能性があります。治療が進んで歯並びがある程度整ってくると、かえって口元に自信が出る方もいます。

一方で、数か月以内に大切な面接がある場合には、装置を入れる時期を慎重に考える必要があります。装置をつけた直後は、痛み、違和感、口内炎、食事のしにくさ、発音のしにくさが出ることがあります。もちろん個人差はありますが、面接直前に治療を開始すると、慣れる前に本番を迎える可能性があります。

このような場合には、面接が終わってから装置を入れる、先に検査や診断だけ進めておく、目立ちにくい装置を検討する、調整日を面接の直前に入れないようにするなど、いくつかの工夫ができます。

矯正治療は、患者さんの生活と一緒に進めていく治療です。就職活動や転職活動は大切な予定ですので、遠慮せずに担当医へ伝えていただいて大丈夫です。

 

 

 

Q&A

 

 

Q.ワイヤー矯正をしていると、就職活動で落とされますか。

A.ワイヤー矯正をしていることだけで不採用になるとは考えにくいです。採用選考は本来、職務に必要な適性や能力で判断されるべきものです。ただし、職種によっては笑顔、発音、清潔感、第一印象が重視されるため、装置の見た目や話し方が気になる可能性はあります。特に接客業、航空業界、ホテル、ブライダル、受付、アナウンサー、営業職などを希望する方は、治療開始時期や装置の種類について相談しておくと安心です。

 

Q.就活中はマウスピース矯正の方がよいですか。

A.マウスピース型矯正装置は目立ちにくいというメリットがあります。そのため、就職活動中の見た目が気になる方には選択肢の一つになります。ただし、すべての歯並びに適しているわけではありません。また、マウスピースでも装着直後に話しにくさを感じることがあります。見た目だけで決めるのではなく、歯並びの状態、治療目標、装着時間を守れるかどうかも含めて判断することが大切です。

 

Q.面接の直前に矯正装置をつけても大丈夫ですか。

A.できれば、大切な面接の直前は避けた方が安心です。装置をつけた直後や調整直後は、痛み、違和感、口内炎、発音のしにくさが出ることがあります。面接日程が分かっている場合には、装置を入れる時期や調整日を担当医と相談しましょう。面接前に十分に慣れる期間を作ることで、落ち着いて本番に臨みやすくなります。

 

 

当院からの提言

 

 

就職活動や転職活動を控えている方にとって、矯正治療を始めるタイミングは悩ましい問題だと思います。

しかし、矯正治療中だから就職活動をあきらめる必要はありません。ワイヤー矯正をしているから必ず不利になる、接客業を目指せない、面接で悪い印象になる、と決めつける必要もありません。

大切なのは、就職活動の時期と治療計画を一緒に考えることです。大切な面接がある時期、写真撮影がある時期、卒業式や成人式などの予定、希望する職種などを事前に共有していただければ、装置の種類や治療開始のタイミングを一緒に検討できます。

矯正治療は、歯並びを整えるだけでなく、将来の笑顔や口元への自信につながる治療でもあります。一時的に装置がつくことへの不安はあると思いますが、その不安を少しでも減らしながら治療を進めることが大切です。

 

 

まとめ

 

 

矯正治療中の就職活動では、ワイヤー矯正の装置が見えることや、滑舌、第一印象を心配される方がいます。公開されている情報からは、矯正装置の有無だけで採用が決まるという明確なルールは確認できません。また、採用選考は本来、応募者の適性や能力に基づいて行われるべきものです。

一方で、実際の面接では企業や職種によって見られるポイントが異なります。特に人前で話す仕事や接客の多い仕事では、笑顔、話し方、清潔感、自然な表情が大切になることがあります。そのため、就職活動や転職活動の予定がある方は、矯正治療を始める前に担当医へ相談しておくことをおすすめします。

就活があるから矯正治療はできない、というわけではありません。むしろ、計画的に進めることで、将来の笑顔に自信を持つきっかけになることもあります。歯並びが気になる方、就職活動と矯正治療の時期で悩んでいる方は、一度矯正歯科で相談してみるとよいと思います。

当院では石岡市をはじめ、土浦市、水戸市、つくば市、小美玉市、かすみがうら市、鉾田市、笠間市など、茨城県内のさまざまな地域から患者さまにご来院いただいております。就職活動、転職活動、成人式、結婚式など、大切な予定を見据えた矯正相談も行っています。歯並びや矯正治療の開始時期でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

 

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石岡みらい矯正歯科 院長:丸岡亮(歯学博士)

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学校検診で歯並びを指摘されたら?すぐに矯正歯科へ行くべきか、相談のタイミングを解説します

 

学校検診で歯並びを指摘された方へ

 

 

こんにちは。
茨城県石岡市、小美玉市、かすみがうら市、笠間市、土浦市からも通っていただいている矯正歯科、石岡みらい矯正歯科・院長の丸岡です。

毎年、学校歯科検診の結果が返ってくる6月頃から、夏休みにかけて、お子様の歯並びやかみ合わせについてのご相談が増えてきます。学校からの用紙に、歯列・咬合、歯並び、かみ合わせ、要観察、要精検といった言葉が書かれていると、保護者の方は少し心配になると思います。

すぐに矯正治療を始めないといけないのか。放っておくと手遅れになるのか。かかりつけの歯科医院でよいのか、矯正専門のクリニックに行った方がよいのか。

今回は、学校検診で歯並びを指摘された場合に、どのように考えればよいのかを、矯正歯科の立場から整理してみたいと思います。

 

 

はじめに:結論

 

学校検診で歯並びやかみ合わせを指摘されたからといって、必ず矯正治療を始めなければならないわけではありません。一方で、指摘を受けた場合には、一度は歯科医院または矯正歯科で確認しておくことをおすすめします

学校検診は、詳しい矯正診断ではありません。短い時間の中で、明らかな問題がありそうか、経過観察でよいか、専門的な確認が必要かを見つけるための検査です。そのため、学校検診で指摘された内容だけで治療の必要性を判断するのではなく、実際のお口の状態、永久歯の生えかわり、顎の成長、レントゲン上の永久歯の位置を含めて確認することが大切です。

特に、反対咬合、前歯が大きく出ている、前歯がかみ合わない、左右のかみ合わせがずれている、永久歯の生える場所が明らかに足りないといった場合は、早めに相談しておくと安心です。

 

 

学校検診で歯列不正を指摘された場合、すぐに受診しないといけないのか

 

学校検診の結果に歯列・咬合の異常と書かれていても、それだけで矯正治療が決まるわけではありません。学校歯科検診は、むし歯や歯肉の状態だけでなく、歯並びやかみ合わせについても確認します。ただし、検診の場ではレントゲン撮影や歯型の分析、横顔の骨格評価、顎関節の詳しい評価までは行いません。

つまり、学校検診は精密検査ではなく、気になる状態を拾い上げるための入口です。

そのため、受診の目的は、すぐに装置をつけるためではありません。今のお子様の状態が、経過観察でよいのか、早めに対応した方がよいのか、永久歯がもう少し生えてから判断してよいのかを確認することが目的になります。

実際には、相談に来られても、すぐに治療開始とならないことも多くあります。小学生の時期は、乳歯から永久歯へ生えかわる途中ですので、一時的に前歯のすき間が目立つことや、歯並びが不安定に見えることがあります。成長の途中として自然に変化する場合もあります。

一方で、見た目だけでは分かりにくい問題が隠れていることもあります。例えば、永久歯が本来と違う方向に向かっている場合、犬歯が埋伏するリスクがある場合、奥歯のかみ合わせが片側だけずれている場合は、学校検診だけでは十分に判断できないことがあります。

大切なのは、焦って治療を始めることではなく、適切な時期を逃さないことです。

 

茨城県の学校歯科検診における歯列・咬合の評価基準

 

学校歯科検診では、歯列・咬合について、異常なし、要観察、要精検という形で判定されます。茨城県歯科医師会の学校歯科健診マニュアルでは、歯列・咬合の評価について、基準が示されています。それを元にしてまとめると以下の通りになります。

叢生は、隣り合う歯が互いの歯冠幅径の4分の1以上重なっているものが、重度の歯列異常として扱われます。いわゆるガタガタ、歯の重なりが強い状態です。

 

 

正中離開は、上の真ん中の前歯の間に6ミリ以上のすき間があるものが目安とされています。ただし、前歯の生え方がまだ途中の場合は、成長や萌出の状態を考慮する必要があります。

 

 

反対咬合は、3歯以上の反対咬合がある場合が目安です。また、1歯だけであっても骨格性の下顎前突が疑われる場合は、精密検査が必要と判断されることがあります。

 

 

上顎前突は、オーバージェット、つまり上の前歯と下の前歯の前後的な差が8ミリ以上あるものが目安とされています。上の前歯が大きく前に出ている状態です。

 

開咬は、上下の前歯が垂直的に6ミリ以上開いているものが目安です。前歯でかみ切りにくい、いつも前歯が開いているといった状態です。

 

そのほか、過蓋咬合、交叉咬合、顎のずれなども、状態によっては精密検査が必要と判断されます。

ここで注意していただきたいのは、この基準は矯正治療を始める基準ではないということです。あくまで、詳しく確認した方がよい状態を見つけるための目安です。実際に治療が必要かどうかは、年齢、歯の生えかわり、骨格、永久歯の位置、口腔習癖、患者さんご本人やご家族の希望を含めて総合的に判断します。

 

小児矯正で早めに相談した方が安心な場合

 

小児矯正は、すべてのお子様に必要な治療ではありません。小学生のうちに矯正治療を始めないと、必ず手遅れになるというわけでもありません。

当院でも以前の記事でお伝えしている通り、小学生の矯正治療は、最終的な歯並びをすべて完成させる治療というより、将来の歯並びやかみ合わせが悪化しにくい環境を整える治療として行うことがあります。

早めに相談した方がよい代表的な状態としては、まず反対咬合があります。前歯のかみ合わせが反対になっている場合、成長とともに骨格的なずれが強くなることがあります。歯の傾きによる反対咬合なのか、骨格的な下顎前突の傾向があるのかを見極めることが大切です。

 

子供の受け口(反対咬合)は何歳から相談すべき?【茨城県石岡市の矯正歯科クリニック・石岡みらい矯正歯科】

 

次に、左右のかみ合わせのずれです。奥歯の幅が合わずに、下顎が左右どちらかにずれてかんでいる場合、顔の成長や顎の使い方に影響する可能性があります。このような場合は、成長期に確認しておく意義があります。

 

前歯が大きく出ている上顎前突も、状態によっては早めの相談が望ましいことがあります。研究では、上の前歯の突出が強いお子様では、前歯の外傷リスクが高くなることが報告されています。すべての上顎前突を早期治療する必要はありませんが、前歯が大きく出ている場合や、転倒時にぶつけやすそうな場合は、一度確認しておくと安心です。

また、永久歯の生える場所が明らかに不足している場合や、上顎犬歯が本来の位置からずれている可能性がある場合も注意が必要です。犬歯の位置は見た目だけでは分かりにくく、必要に応じてレントゲンで確認します。

さらに、指しゃぶり、舌を前に出す癖、口呼吸、前歯でかめない開咬がある場合も、歯並びだけでなく、機能面を含めて評価した方がよいことがあります。

 

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相談に適した時期は6月から夏休み頃

 

学校歯科検診は春から初夏にかけて行われることが多く、結果の用紙が6月頃に返ってくることが多いと思います。そのため、6月から夏休みにかけて、学校検診で歯並びを指摘されたというご相談は増えやすい時期です。

これは、矯正歯科の相談時期としても自然な流れです。

夏休みは、学校を休まずに初診相談や精密検査を受けやすい時期です。もし装置を使うことになった場合でも、最初の違和感に慣れる時間を取りやすいというメリットがあります。

ただし、夏休みに入ってから急いで予約を取ろうとすると、希望の日時が取りにくいこともあります。学校検診の結果を受け取って気になる内容があれば、6月から7月の早い時期に一度相談しておくと、その後の予定が立てやすくなります。

一方で、6月を過ぎたから遅いということはありません。秋や冬の相談でも問題ありません。大切なのは、気になっている状態を長く放置せず、一度確認しておくことです。

 

 

かかりつけ歯科でよいのか、矯正専門クリニックがよいのか

 

まず、かかりつけの歯科医院がある場合は、そこに相談するのはとても良い選択です。

普段からむし歯や歯肉の状態を見てもらっている先生であれば、お子様の性格や通院状況も把握されています。歯並びの問題が軽度であれば、経過観察や定期的な確認で十分なこともあります。

一方で、矯正治療が必要かどうか、いつ始めるべきか、成長をどう見るべきか、永久歯の位置に問題がないかといった点については、矯正歯科専門の評価が役立つことがあります。

特に、反対咬合、顎のずれ、強い上顎前突、開咬、永久歯の萌出異常、犬歯の埋伏リスク、抜歯が必要かどうかの判断が関わる場合は、矯正専門クリニックで一度相談すると、より詳しい説明を受けやすいと思います。

ただし、地域によっては近くに矯正専門の歯科医院がない場合もあります。その場合は、まずかかりつけ歯科で相談し、必要に応じて矯正歯科を紹介してもらう流れでよいと思います。

大切なのは、どこに行くかだけではなく、現状を正しく把握し、治療開始の時期を焦らず判断することです。

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Q&A

 

Q. 学校検診で歯列・咬合にチェックがつきました。必ず矯正治療が必要ですか。

A. 必ず必要という意味ではありません。学校検診は、詳しい検査が必要かどうかを見つけるためのスクリーニングです。実際には、経過観察でよい場合もありますし、数年後に再評価でよい場合もあります。ただし、要精検とされた場合や、保護者の方が見ても明らかに気になる場合は、一度確認しておくことをおすすめします。

 

Q. 小学生のうちに相談しないと手遅れになりますか。

A. 多くの場合、すぐに手遅れになるわけではありません。永久歯が生えそろってから本格矯正治療を行うことも可能です。ただし、反対咬合、左右のかみ合わせのずれ、強い上顎前突、犬歯の萌出異常、開咬につながる癖がある場合は、成長期に評価しておいた方がよいことがあります。相談したからといって、すぐに治療開始になるわけではありません。

 

Q. 学校検診では問題なしでしたが、歯並びが気になります。相談してもよいですか。

A. もちろん相談していただいて大丈夫です。学校検診は短時間で行う検査ですので、すべての問題を細かく確認できるわけではありません。特に、顎の中にある永久歯の位置、犬歯の方向、先天性欠如、過剰歯、奥歯のかみ合わせのずれなどは、レントゲンを含めた確認が必要になることがあります。学校検診で異常なしでも、保護者の方が気になる場合は、一度相談しておくと安心です。

 

 

当院からの提言

 

学校検診で歯並びを指摘されたときに大切なのは、不安になりすぎないこと、そして放置しすぎないことです。

矯正治療は、早ければ早いほどよいという単純なものではありません。早期治療にはメリットがある一方で、成長や生えかわりを待った方がよい場合もあります。また、小児矯正を行ったとしても、将来的に本格矯正治療が必要になることもあります。

そのため、学校検診の結果は、治療を決める紙ではなく、確認のきっかけと考えていただくのがよいと思います。

特に茨城県石岡市周辺では、学校検診の結果が返ってくる6月頃から、夏休みにかけて、歯並びや小児矯正のご相談が増えます。夏休みは相談や検査を受けやすい時期ですので、学校検診で指摘を受けた方、前歯の生えかわりが気になる方、受け口や出っ歯、ガタガタ、開咬が気になる方は、一度ご相談ください。

お子様の歯並びは、今すぐ治すかどうかだけではなく、これからどのように成長していくかを見通すことが大切です。

当院では、必要な場合には治療の選択肢をご説明し、経過観察でよい場合にはその理由と次に確認すべき時期をお伝えするようにしています。学校検診の結果をきっかけに、お子様の歯並びとかみ合わせについて一度整理してみるとよいと思います。

 

 

まとめ

 

学校検診で歯並びやかみ合わせを指摘されても、必ず矯正治療が必要というわけではありません。

ただし、学校検診は詳しい矯正診断ではないため、歯列・咬合の異常、要観察、要精検と記載された場合には、一度歯科医院または矯正歯科で確認しておくと安心です。

茨城県の学校歯科検診では、叢生、正中離開、反対咬合、上顎前突、開咬などについて具体的な目安が示されていますが、これは治療開始の基準ではなく、詳しい確認が必要かどうかを判断するための目安です。

小児矯正では、反対咬合、左右のかみ合わせのずれ、強い上顎前突、開咬、永久歯の萌出異常など、早めに評価した方がよい状態があります。

学校検診の結果が返ってくる6月頃から夏休みは、相談しやすい時期です。相談したからといって、すぐに治療を始める必要はありません。まずは現在の状態を知り、適切な時期を確認することが大切です。

 

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石岡みらい矯正歯科 院長:丸岡亮(歯学博士)

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お口がポカンと開いている子は、歯並びに影響する?口呼吸と顎の成長について

 

 

お口がポカンと開いている子は、歯並びに影響する?

 

 

こんにちは。

茨城県石岡市、小美玉市、かすみがうら市、笠間市、土浦市からも通っていただいている矯正歯科、石岡みらい矯正歯科・院長の丸岡です。

主に学童期の患者さんのご家族から、このようなご相談をいただくことがあります。

「いつも口が開いている気がする」
「寝ているときに口で息をしている」
「鼻づまりが多い」
「いびきをかくことがある」

このような様子があると、保護者の方も、成長発育に大丈夫か、少し心配になるかもしれません。

口呼吸は、単なる癖のように思われることがあります。しかし、成長期のお子さんでは、歯並びや顎の成長が、舌の位置、口の周りの筋肉の使い方と関係する可能性があります。今回は、2025年に発表された口呼吸と歯並び、下顎の位置、頭や首の姿勢についてまとめた論文を参考にして、お伝えをさせていただきます。

 

 

今回参考にした論文

 

今回参考にしたのは、以下の論文です。

Oral Breathing Effects on Malocclusions and Mandibular Posture: Complex Consequences on Dentofacial Development in Pediatric Orthodontics

Childrenという学術誌に、2025年に掲載された論文です。

この論文では、口呼吸が続くことで、子どもの歯並びや顎の成長、下顎の位置、頭や首の姿勢にどのような影響が出る可能性があるのかについて、過去の研究をもとに整理されています。

論文の内容の趣旨は口呼吸は、成長期のお子さんの歯並びや顎顔面の発育に関係する可能性がある、というもので、これを体系的にまとめて説明しているものです。新たな知見があったというわけではありませんが、口呼吸の子供の成長への影響をいろいろな角度から理論的にまとめたものであり、患者さんに説明するのにもってこいのものだと思い、ここでご紹介をさせていただくことにしました。

内容としては、「口呼吸だから、必ず歯並びが悪くなる」「口呼吸を治せば、歯並びも自然に治る」という単純な話ではもちろんありません。口呼吸は、歯並びや顎の成長を見るうえで、見逃してはいけない大切なサインのひとつと考えるとよいと思われました。

 

 

なぜ口呼吸が歯並びと関係するのか

 

 

口呼吸が続くと、まず変化しやすいのが舌の位置です。

本来、何もしていないときの舌は、上あごの内側に軽く触れている状態が望ましいとされています。ところが、口で呼吸する状態が続くと、空気の通り道を確保するために、舌が低い位置になりやすくなります。

舌が低い位置にあると、上あごを内側から支える力が弱くなります。その結果、上あごの歯列が狭くなりやすいと考えられています。(言い方を変えると、舌が上あごの内側にあり、骨を軽く押すことで拡がっていくとも考えられています)

上あごが狭くなると、歯が並ぶスペースが足りなくなり、歯並びにガタガタ(叢生)が生じやすくなります。また、奥歯のかみ合わせが横にずれる交叉咬合や、前歯がかみ合わない開咬などと関係することもあります。

つまり、口呼吸は、ただ口で息をしているというだけでなく、舌の位置、唇の閉じ方、頬や口の周りの筋肉のバランスにも関係してくるのです。

 

 

口呼吸の子どもに見られやすい特徴

 

 

論文では、口呼吸のある子どもでは、次のような特徴と関連する可能性があるとまとめられています。

上あごが狭くなりやすい

歯並びがでこぼこしやすい

奥歯のかみ合わせが横にずれることがある

前歯がかみ合わないことがある

下顎が後ろに下がったように見えることがある

横顔がやや凸型に見えることがある(convex facial profile)

顔の下半分が長く見えることがある(Dolicofacial pattern)

頭や首が前に出たような姿勢になることがある

 

もちろん、これらがすべてのお子さんに起こるわけではありません。

同じように口呼吸をしていても、歯並びや顎の成長への影響は、お子さんによって異なります。遺伝的な要素、鼻の通りやすさ、アレルギーの有無、舌や唇の使い方、成長の方向など、いくつもの要素が関係します。

 

 

口呼吸と姿勢の関係

 

今回の論文で興味深い点は、歯並びだけでなく、頭や首の姿勢にも注目しているところです。

鼻で息がしにくい状態が続くと、体は少しでも空気を通しやすくしようとします。その結果、無意識のうちに頭を前に出したり、首を伸ばすような姿勢になったりすることがあります。口呼吸のお子さんでは、頭が前に出る、首が伸びる、肩が前に出るといった姿勢の変化が見られることがあるとされています。

これは、単に姿勢が悪いという話ではありません。

呼吸をしやすくするために、体がその姿勢を選んでいる場合があります。そのため、「姿勢を正しなさい」と注意するだけでは解決しないこともあります。

歯並び、舌の位置、口唇の閉じやすさ、鼻の通り、姿勢は、それぞれ別々の問題ではなく、つながっている可能性があります。

以下のイラストは論文に掲載されていた図を引用しました。(今回の内容を示した非常にわかりやすい図かと思います。)

↑ 正常とされている姿勢と顎の位置

 

↑ 口呼吸の人に起こりやすい姿勢と顎の位置

 

 

口呼吸は「癖」だけではありません

 

 

お子さんが口を開けていると、「口を閉じなさい」「ちゃんと鼻で息をしなさい」と言いたくなることがあるかもしれません。もちろん、口を閉じる意識が大切な場合もあります。しかし、口呼吸の原因が、本人の癖だけではないこともあります。

たとえば、アレルギー性鼻炎、慢性的な鼻づまり、アデノイドや扁桃の肥大などがあると、鼻で呼吸しにくくなります。

鼻で息がしにくい状態で、無理に口を閉じるように言っても、お子さんにとっては苦しいだけかもしれません。そのため、口呼吸が気になる場合には、まず「なぜ口で呼吸しているのか」を確認することが大切です。歯並びの問題として見るだけでなく、鼻の通りや睡眠の様子も一緒に考える必要があります。

 

 

ご家庭で気づきやすいサイン

次のような様子がある場合は、口呼吸が続いている可能性があります。

日中、口がポカンと開いている

寝ているときに口が開いている

いびきをかく

鼻づまりが多い

唇が乾きやすい

朝起きたときに口が乾いている

食べるときに口を閉じにくそう

ただし、これらに当てはまるからといって、すぐに矯正治療が必要という意味ではありません。大切なのは、早めに状態を確認することです。

 

 

口呼吸を治せば、歯並びは自然に治るのか

 

ここは、患者さんからもよく質問されるところです。

口呼吸の改善はとても大切です。しかし、口呼吸を改善しただけで、すでに起きている歯並びや顎の問題が自然に治るとは限りません。たとえば、すでに上あごが狭くなっている場合、歯が並ぶスペースが足りない場合、前歯がかみ合っていない場合には、矯正治療が必要になることがあります。

一方で、口呼吸や舌の位置、唇の使い方をそのままにして歯並びだけを整えても、治療後に歯並びが崩れてしまう後戻りが起こる原因になることがあります。そのため、矯正治療では、歯だけを見るのではなく、呼吸、舌、唇、顎の成長を含めて考えることが大切です。

 

 

矯正歯科で確認すること

 

 

矯正歯科では、歯並びだけでなく、必要に応じて、レントゲン写真や口腔内写真を使い、顎の骨格や歯の位置を詳しく確認します。また、鼻づまりやいびき、アレルギー症状が強い場合には、耳鼻科での確認が必要になることもあります。

小児矯正では、矯正歯科だけで完結するのではなく、必要に応じて耳鼻科などと連携していきます。

 

 

*この論文を読むうえでの注意点

今回の論文は、口呼吸と歯並び、顎の成長、姿勢との関係をまとめたレビュー論文です。

口呼吸が不正咬合や顎顔面の発育と関係する可能性は示されていますが、すべてのお子さんに同じ変化が起こるわけではありません。また、口呼吸が原因で歯並びに影響する場合もあれば、もともとの顎の形や鼻の通りにくさがあり、その結果として口呼吸になっている場合もあります。つまり、原因と結果を完全に結びつけるものではないということです。実際の診療では、お子さん一人ひとりの状態を見て判断する必要があります。

 

 

当院の考え

 

 

お子さんのお口がいつも開いている場合、それを単なる癖と決めつけるのではなく、まずは理由を考えることが大切です。総合的に確認することで、今後どのように見守るべきか、治療が必要なのか、耳鼻科での確認が必要なのかを考えやすくなります。

特に成長期のお子さんでは、早めに状態を確認することで、将来的な治療の選択肢が広がることがあります。

口呼吸は、叱って直すものではありません。「なぜ口が開いているのか」「鼻で呼吸しにくい原因があるのか」「歯並びや顎の成長に影響が出ていないか」を確認していくことが大切だと考えています。

 

 

Q&A

 

 

Q. 子どもが口を開けているだけで、矯正治療が必要ですか?

必ずしも矯正治療が必要というわけではありません。ただし、口が開いている状態が長く続いている場合、鼻呼吸がしにくい、舌の位置が低い、上あごが狭い、口を閉じにくいなどの問題が隠れていることがあります。気になる場合は、一度確認しておくと安心です。

 

Q. 口呼吸を改善すれば、歯並びは自然に治りますか?

口呼吸の改善は大切ですが、それだけで歯並びが自然に治るとは限りません。すでに歯列が狭くなっていたり、前歯がかみ合っていなかったりする場合には、矯正治療が必要になることもあります。

 

Q. 口呼吸が気になる場合、何科に相談すればよいですか?

鼻づまり、いびき、アレルギー症状が強い場合は、耳鼻科で鼻やのどの状態を確認することが大切です。歯並び、上あごの狭さ、口が閉じにくい、前歯が出ている、かみ合わせが気になる場合は、矯正歯科での相談もおすすめです。

 

 

まとめ

 

 

口呼吸は、単なる癖ではなく、成長期のお子さんの歯並び、顎の成長、舌の位置、口唇の使い方、頭や首の姿勢と関係する可能性があります。今回紹介した論文でも、口呼吸は小児期の不正咬合や顎顔面の発育に関係する重要な要素のひとつとしてまとめられています。

ただし、口呼吸だけで歯並びが決まるわけではありません。

大切なのは、歯並びだけを見るのではなく、鼻呼吸、舌の位置、口唇閉鎖、顎の成長、姿勢を総合的に確認することです。お子さんのお口がいつも開いている、鼻づまりが多い、いびきをかく、歯並びが気になるという場合は、早めに専門家へ相談してみてください。

 

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強く引っ張れば早く歯が動く?適した矯正の力、至適矯正力について

 

 

強く引っ張れば早く歯が動く?

投稿:2026/05/13    最終更新:2026/06/07

 

 

こんにちは。

茨城県石岡市、小美玉市、かすみがうら市、笠間市、土浦市からも通っていただいている矯正歯科、石岡みらい矯正歯科・院長の丸岡です。

主にワイヤー矯正をしている方、これから矯正治療を考えている方から、ときどきこのようなご質問やご要望をいただくことがあります。

「ワイヤーを強くすれば、治療期間は短くなりますか。」

「ゴムを強くかければ、歯は早く動きますか。」

「(矯正治療を早く終わらせるために、)もっと強く引っ張ってください!」

矯正治療は長い期間がかかることが多いため、できれば早く終わらせたいと思うのは自然なことです。学校生活、仕事、結婚式、就職活動、引っ越しなど、患者さんそれぞれに予定がありますので、治療期間が気になるのは当然です。しかし、矯正治療においては、強い力をかければかけるほど歯が早く動く、というわけではありません。

 

結論からお伝えすると、歯を効率よく安全に動かすためには、強い力ではなく、歯の周りの組織が反応できる適切な力を、持続的にコントロールすることが大切です。この考え方を、矯正歯科では至適矯正力と呼びます。

 

今回は、ワイヤー矯正で歯が動く仕組み、強すぎる力がなぜよくないのか、そして治療を早く進めるために本当に大切なことについて、お伝えさせていただきたいと思います。

 

歯は力で押されてそのまま動くわけではありません

 

 

矯正治療というと、ワイヤーやゴムで歯を引っ張り、歯がその方向へ押し出されるように動くイメージを持たれるかもしれません。しかし実際には、歯は単純に押されて移動しているわけではありません。

歯の根の周りには、歯根膜という薄いクッションのような組織があります。歯根膜は、歯と歯を支える骨の間にある大切な組織です。矯正力が加わると、この歯根膜に圧迫される部分と、引っ張られる部分ができます。

圧迫される側では骨が少しずつ吸収され、引っ張られる側では新しい骨が作られていきます。この骨の作り替わりが繰り返されることで、歯は少しずつ移動していきます。

つまり矯正治療は、力で歯を無理やり動かす治療ではなく、歯の周りの骨が生体反応として作り替わる力を利用した治療です。このため、歯が動くスピードには限界があります。骨や歯根膜が反応する時間を無視して、力だけを強くしても、思ったように早く進むとは限りません。

 

 

 

強い力をかければ早く動くとは限りません

 

 

患者さんの感覚としては、強い力をかけた方が早く歯が動きそうに感じるかもしれません。たとえば、重い荷物を動かすときには、弱い力より強い力の方が動かしやすいと思います。その感覚から、矯正治療でも強く引っ張った方が早く歯が動くと考えられると思いますが、実際は、歯の移動は物を押して動かすこととは違います。

矯正力が強すぎると、歯根膜が強く圧迫され、血流が悪くなることがあります。その結果、歯の周りの組織が一時的に反応しにくい状態になり、骨の吸収がスムーズに進まなくなることもあるとされています

このような状態では、歯が早く動くどころか、かえって移動が効率的でなくなる可能性があります。また、痛みが強く出たり、歯根吸収と呼ばれる歯の根が短くなるリスクに配慮が必要になったりすることもあります。

もちろん、矯正治療ではある程度の違和感や痛みが出ることはあります。しかし、痛みが強いほど歯がよく動いている、という意味ではありません。適切な矯正治療では、ただ強い力をかけるのではなく、歯の動き方、歯の根の向き、骨の状態、歯ぐきの状態、噛み合わせを確認しながら、必要な力を調整していきます。

 

↑ 弱いけど、持続的に力をかけることが望ましいとされています

 

 

 

至適矯正力とは何か

 

 

至適矯正力とは、簡単にいうと、歯を効率よく動かしながら、歯や歯周組織への負担をできるだけ少なくするための力、いわゆる矯正治療に適した力のことです。ただ、すべての患者さんに共通する一つの数値があるわけではありません。

例えば、歯を少し傾ける動きと、歯の根ごと全体的に平行に動かす動きでは、必要な力は異なります。前歯を少し圧下する場合と、奥歯を同じように動かす場合でも条件は変わります。さらに、子どもの成長期の治療と、大人の本格矯正治療でも、骨や歯周組織の反応は同じではないと考えています。

文献上も、矯正治療における至適矯正力については、はっきりした一つの答えがあるわけではありません。過去の報告では、研究によって歯の種類、移動様式、力の大きさ、期間、動物実験かヒトの研究かといった条件が大きく異なるため、矯正治療全体に共通する明確な至適矯正力を決めることは難しいとされています。

一方で、固定式装置による歯体移動に関する研究では、50から100 g程度の比較的軽い力が、歯の移動、患者さんの快適性、副作用の少なさの点で適している可能性があると報告されています。

ただし、この数値も絶対的なものではありません。歯の移動様式や歯根の形、歯槽骨の状態、装置の種類によって適切な力は変わります。

 

 

 

弱い持続的な力が大切といわれる理由

 

 

矯正治療では、弱い持続的な力が望ましいと説明されることがあります。これは、歯を少しずつ動かすためには、歯根膜や骨が継続的に反応する環境を作る必要があるからです。

力が弱すぎると、歯を動かすための反応が十分に起こらないことがあります。一方で、力が強すぎると、歯根膜に過度な負担がかかり、組織の反応がスムーズに進みにくくなることがあります。

つまり大切なのは、単に弱ければよいということではありません。歯が動くために必要な力を、過度にならない範囲で、継続的に加えることが重要です。ワイヤー矯正では、ワイヤーの太さや材質、曲げ方、ゴムの使い方、ブラケットの位置、アンカースクリューの使用、抜歯スペースを閉じる方法を変えるなどによって、歯にかかる力をコントロールします。

患者さんから見ると、毎回同じようにワイヤーを交換しているように見えるかもしれませんが、実際には、どの歯をどの方向に動かすか、どの歯を固定源として使うか、歯根をどうコントロールするかを考えながら調整しています。

 

↑ 例えば、しなやかに弱い力で動かすことのできるワイヤーも多用します。

 

 

 

治療を早く進めるために本当に大切なこと

 

 

では、矯正治療をできるだけ効率よく進めるためには、何が大切なのでしょうか。

まず大切なのは、診断と治療計画です。

歯を並べるスペースが足りないのか、抜歯が必要なのか、顎の骨格に問題があるのか、前歯の角度をどこまで変えるのか、奥歯の位置をどう考えるのかによって、治療の進み方は大きく変わります。無理に非抜歯で進めることで歯が前に出過ぎたり、逆に必要なスペースが足りずに治療が長引いたりすることもあります。早く終わらせるためには、最初の診断で無理のないゴールを設定することがとても重要です。

次に大切なのは、取り外しの装置がある場合は、それを正しく使うことになります。

ワイヤー矯正で顎間ゴムを使う場合、ゴムを決められた時間使わないと、予定していた歯の動きが得られにくくなります。マウスピース矯正の場合も、装着時間が不足すると、歯の移動が計画からずれてしまうことがあります。

患者さんご自身の協力度は、治療期間に大きく関係します。強いゴムを勝手に使うことよりも、指示されたゴムを正しく使うことの方が、ずっと大切です。

また、むし歯や歯ぐきの炎症を防ぐことも重要です。矯正治療中にむし歯や歯肉炎が悪化すると、一時的に治療を止めたり、装置の調整を慎重に行ったりする必要が出てくることがあります。

定期的な通院も大切です。矯正治療では、歯の動きに合わせてワイヤーやゴムを調整します。予約間隔が大きく空いてしまうと、治療計画通りに進みにくくなることがあります。

早く終わらせるために必要なのは、強い力をかけることではありません。適切な診断、適切な力のコントロール、患者さんの協力、清掃状態の維持、定期的な通院がそろうことで実現できると思っています

 

 

早く動かす方法はありますか?

 

 

矯正治療を早く進める方法については、さまざまな研究が行われています。

たとえば、外科的な処置を併用して骨の代謝を一時的に高める方法、レーザーや光を使う方法、振動を使う方法などが研究されています。一部の方法では、短期的に歯の移動を促進する可能性が報告されています。

しかし、すべての方法が十分に確立されているわけではありません。研究によって結果にばらつきがあり、効果の大きさ、安全性、費用、患者さんの負担を総合的に考える必要があります。

また、歯を早く動かすことだけが治療ではありません。歯の根の位置、噛み合わせ、歯ぐきや骨の健康、治療後の安定性まで考える必要があると思っています。

短期間で歯並びがきれいに見えるようになっても、歯の根が適切な位置にない場合や、噛み合わせが安定していない場合には、長い目で見るとよい治療とはいえないのではないかと思っています。私は、矯正治療で大切なのは、安全に、無理なく、できるだけ安定した結果を目指すことだと考えて日々、診療しています。

 

 

Q&A

 

Q. ワイヤーを強くすれば、矯正治療は早く終わりますか。

必ずしも早く終わるわけではありません。歯は骨の作り替わりによって動くため、強すぎる力をかけると歯根膜に負担がかかり、かえって効率が悪くなることがあります。痛みや歯根吸収のリスクにも配慮が必要です。治療を早く進めるには、強い力よりも、適切な力を正しい方向にコントロールすることが大切です。

 

Q. 痛みが強い方が、歯がよく動いているということですか。

痛みが強いほど歯がよく動いている、というわけではありません。矯正治療では、歯の周りの組織が反応することで違和感や痛みが出ることがありますが、痛みの強さと歯の移動量がそのまま比例するわけではありません。強い痛みが続く場合や、装置が当たって痛い場合には、我慢せずにご相談ください。

 

Q. 自分でゴムを強くしたり、本数を増やしたりしてもよいですか。

自己判断でゴムを強くしたり、本数を増やしたりすることはおすすめできません。顎間ゴムは、歯を動かす方向や固定源のバランスを考えて指示しています。勝手に変更すると、予定していない方向に歯が動いたり、噛み合わせが乱れたりする可能性があります。早く治したい場合こそ、指示された使い方を正確に守ることが大切です。

 

Q. 矯正治療を早く終わらせるために、自分でできることはありますか。

あります。まず、予約通りに通院すること、顎間ゴムやマウスピースを指示通りに使うこと、装置を壊しやすい食べ物に注意すること、歯磨きを丁寧に行うことが大切です。むし歯や歯ぐきの炎症、装置の破損があると、治療が予定通り進みにくくなることがあります。

 

 

当院からの提言とまとめ

 

 

矯正治療では、強い力をかければ早く歯が動く、というわけではありません。歯は、歯根膜や歯槽骨といった周囲の組織が反応し、骨が少しずつ作り替わることで移動します。そのため、歯を効率よく安全に動かすには、組織が反応できる範囲の適切な力をかけることが大切です。

至適矯正力という考え方は、歯をできるだけ効率よく動かしながら、歯や歯周組織への負担を少なくするためのものです。ただし、すべての患者さんに共通する一つの数値があるわけではありません。歯の種類、動かし方、骨や歯ぐきの状態、年齢、治療計画によって、適切な力は変わります。

早く治したいという気持ちは、とても自然なことです。しかし、矯正治療で本当に大切なのは、無理に強い力をかけることではなく、診断に基づいて適切な力を使い、計画的に歯を動かすことです。

当院では、レントゲン写真、セファログラム、歯科用CTなどを必要に応じて用いながら、歯の位置だけでなく、歯の根、骨格、噛み合わせ、歯周組織の状態を確認して治療計画を立てています。

矯正治療を早く終わらせたい方にこそ、まずは無理のない計画と、適切な力のコントロールが大切です。

歯並びを整えることは、見た目だけでなく、将来の噛み合わせやお口の健康にも関わる大切な治療です。焦らず、しかし無駄なく、安全に進めていくことが大切だと考えています。

 

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ワイヤー矯正治療の流れ

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石岡みらい矯正歯科 院長:丸岡亮(歯学博士)

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口腔内スキャナーとは?従来の歯型取りとの違いと、矯正治療で大切な理由

 

 

口腔内スキャナーとは?従来の歯型取りとの違いと、矯正治療で大切な理由

 

 

こんにちは。

茨城県石岡市、小美玉市、かすみがうら市、笠間市、土浦市からも通っていただいている矯正歯科、石岡みらい矯正歯科 院長の丸岡です。

矯正歯科治療に限らず、歯科治療の際には、お口の中の型取り(印象採得)が必要になることがあります。口の中の装置、入れ歯、被せ物などの補綴物を作製する際には必要なものになります。この型取りに使われるアルジネートと呼ばれる材料は独特の感触、味、匂いなどで苦手としている方が多いものなります。また、嘔吐反射がある方には、辛い処置でもあります。

近年、この型取りの方法として、口の中のスキャナー(口腔内スキャナー、IOS)が登場し、歯科医院にも導入され始めています。口腔内スキャナーは、矯正治療に必要な歯並びやかみ合わせの情報を、デジタルデータとして記録し、診断や治療計画、装置作製、治療前後の比較に役立てるための道具です。従来の粘土のような材料をお口に入れる歯型取りが苦手な方にとって、口腔内スキャナーは大きな助けになります。息苦しさ、気持ち悪さ、固まるまで待つ時間がつらいという方も少なくありません。

今回は、口腔内スキャナーとは何か、従来の歯型取りと何が違うのか、そして矯正治療においてどのような利便性があるのかを、まとめてみましたので、お伝えさせていただきます。

 

↑ お子様でも安心して取れる方法です。

 

 

矯正治療では、模型診査がとても大切です

 

 

矯正治療は、歯をただきれいに並べる治療ではありません。歯の大きさ、歯が並ぶスペース、上下のあごの関係、かみ合わせ、前歯の角度、奥歯の位置、口元のバランスなどを総合的に見ながら治療計画を立てていきます。

そのため、矯正治療の前には、口腔内写真、顔貌写真、レントゲン写真、セファログラム、必要に応じたCBCT、そして歯列の模型など、複数の資料を組み合わせて診断を行います。この中で歯列の模型は、歯並びを立体的に確認するためにとても重要な資料です。

写真だけでは、歯の幅、歯列弓の形、上下の歯の接触関係、左右差、スペース不足の程度などを細かく確認するには限界があります。模型があることで、歯を上から見たり、横から見たり、上下の歯をかみ合わせたりしながら、治療方針をより具体的に考えることができます。

近年は、この模型を石膏で作るのではなく、口腔内スキャナーで読み取ったデジタル模型として利用する方法が広がっています。

 

 

従来の歯型取り:アルジネート印象

 

 

従来、矯正治療で歯列の模型を作るときには、アルジネートという印象材を使うことが一般的でした。アルジネート印象は、歯科では長く使われてきた方法で、専用のトレーに柔らかい材料を盛り、お口の中に入れて数分待ち、固まったら取り出します。その型に石膏を流すことで、歯列模型を作ります。

この方法は長い歴史があり、現在でも最も有用な方法です。一方で、患者さんにとっては負担になることがあります。材料がお口いっぱいに入るため、気持ち悪くなりやすい方、嘔吐反射が強い方、口を長く開けているのが苦手な方、小さなお子さんでは大変に感じることがあります。私も子供のころ、大変苦手でした。

また、印象材は一度変形したり、うまく採れなかったりすると、再度取り直しが必要になることもあります。特に矯正治療では、奥歯までしっかり入っているか、歯肉との境目が読めているか、気泡や変形がないかが重要になります。模型を作った後も、石膏を流す、固まるまで待つ、保管する、必要に応じて技工所へ送るといった手順が必要です。

つまり従来の歯型取りは、決して悪い方法ではありませんが、患者さんにとっても医療者にとっても、ある程度の負担と手間を伴う方法でした。

 

↑ アルジネート印象は現在でも主流です

 

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歯医者の歯型取り(印象採得)が苦手な方へ |気持ち悪くなりやすい理由と対策について

 

口腔内スキャナーとは?

 

 

口腔内スキャナーは、カメラのような機器をお口の中に入れて、歯や歯ぐき、かみ合わせの形を3次元データとして読み取る装置です。英語では Intraoral Scanner と呼ばれ、その頭文字をとってIOSと表記されることもあります。

イメージとしては、お口の中を動画のように少しずつ撮影しながら、歯の表面の形をデジタルでつなぎ合わせていく方法です。ただ写真を撮っているだけではなく、光を使って歯の表面との距離や形を読み取り、ソフトウェア上で立体的な模型を作ります。光で歯の形を読み取り、コンピューター上で3D模型を作る装置と考えるとわかりやすいと思います。

矯正治療では、このデータを使って歯列の状態を確認したり、小児矯正の装置、マウスピース型矯正装置、保定装置、診断用模型、治療前後の比較資料などに利用したりします。

 

 

↑      当院では最新型のIOSを導入しています

 

 

口腔内スキャナーのメリット

 

 

患者さんにとって一番わかりやすいメリットは、従来の印象材をお口いっぱいに入れる必要が少なくなることです。歯型取りが苦手な方にとって、これは大きな安心材料になります。気持ち悪くなりやすい方、材料の味やにおいが苦手な方、息苦しさを感じやすい方では、口腔内スキャナーの方が受け入れやすいことがあります。

また、スキャンしたデータをその場で画面に表示できるため、患者さん自身が歯並びを理解しやすくなります。鏡で見るだけではわかりにくい奥歯のかみ合わせ、歯列の幅、歯のねじれ、上下の歯の関係などを、画面上で一緒に確認できます。

医療者側にとっても、データを保存しやすい、模型の保管スペースを減らせる、必要なときに再確認しやすい、技工所とのデータ共有がしやすいというメリットがあります。保定装置を作るときや、治療前後の変化を比較するときにも、デジタルデータは有用です。

矯正治療では時間の経過による変化を追うことが大切です。治療前、治療中、治療後のデータを比較することで、歯がどのように動いたのか、歯列がどのように変化したのかを確認しやすくなります。この点は、従来の石膏模型だけでは扱いにくかった部分です。

また、保存性に強いという点もメリットかと思います。例えば、震災の際に模型が破損してしまう心配が減りますし、定期的に破棄する必要もなくなります。

 

 

口腔内スキャナーのデメリットと注意点

 

 

一方で、口腔内スキャナーは万能ではありません。カメラをお口の中で動かして撮影するため、口を開けている時間は必要です。舌や頬が動きやすい方、唾液が多い方、奥歯の奥まで器具が入りにくい方では、スキャンに時間がかかることがあります。

また、スキャンの精度は機械だけで決まるものではありません。どの順番で読み取るか、唾液をどのようにコントロールするか、頬や舌をどう排除するか、読み取り不足をどこで判断するかなど、術者の経験も関係します。

精度については、診断用や短い範囲のスキャンでは従来法と比較して十分実用的とする報告が多くあります。一方で、歯列全体のように広い範囲を連続してスキャンする場合、データをつなぎ合わせる過程で誤差が生じやすいことも指摘されています。

ただし、ここで大切なのは、口腔内スキャナーは不正確だから不安ということではありません。むしろ近年の機器とソフトウェアは大きく進歩しており、矯正診断用のデジタル模型として十分有用と考えられる場面が増えています。実際に、保険診療においても使用ができるようにもなっていますが、これは一定の精度があると国が認めたことにもなります。

 

 

シミュレーションにも活用

 

 

患者さんに誤解していただきたくない点があります。口腔内スキャナーで歯並びを読み取ると、画面上にきれいな3D画像が出てきます。場合によっては、歯が並ぶシミュレーションを見られることもあります。

しかし、画面上できれいに歯が並ぶことと、実際に安全にその位置まで歯を動かせることは同じではありません。歯の根の位置、骨の厚み、歯周組織の状態、あごの骨格、かみ合わせ、口元のバランス、成長の有無などを含めて判断する必要があります。

つまり、口腔内スキャナーは診断を助ける道具ですが、診断そのものを自動で行う機械ではありません。矯正治療では、デジタルデータを便利に使いながらも、レントゲン、セファログラム、口腔内写真、顔貌写真、実際のお口の状態を総合的に見て治療計画を立てることが重要です。

この点は、マウスピース矯正を検討している方にも大切です。スキャンデータがあるから治療が簡単になるのではなく、スキャンデータをもとに、どの歯をどの順番で、どのくらい動かすのかを適切に設計することが大切です。

 

 

Q&A

 

Q:口腔内スキャナーは痛いですか

基本的に、口腔内スキャナーそのものに痛みはありません。歯を削る機械ではなく、光で歯の形を読み取る機器です。ただし、奥歯の奥まで読み取るときに、頬や唇を少し引っ張ったり、口を開けていただいたりするため、口が小さい方や開きにくい方では少し疲れることがあります。

従来の印象材のように、材料が固まるまでじっと待つ必要が少ない点はメリットです。一方で、スキャン範囲が広い場合や、読み取りにくい部分がある場合には、追加で撮影することがあります。

 

Q:口腔内スキャナーの方が、従来の歯型取りより正確ですか

これは、目的によって答えが変わります。診断用の歯列模型や短い範囲のスキャンでは、口腔内スキャナーは従来法と比較して十分実用的な精度を示す報告が多くあります。

一方で、すべての場面で必ず口腔内スキャナーの方が正確というわけではありません。広い範囲を一度に読み取る場合、深い歯肉縁下の形を読み取る場合、唾液や出血が多い場合などでは注意が必要です。大切なのは、目的に応じて適切な方法を選ぶことです。

個人的には、従来の印象で作製した矯正装置と、最新の機械でスキャンしたデータで作製した矯正装置で適合具合の差はあまり感じません。

 

Q:口腔内スキャナーを使えば、もう歯型取りは必要ありませんか

多くの場面で、従来の歯型取りを口腔内スキャナーに置き換えることができます。特に矯正治療の診断用模型、マウスピース型矯正装置、保定装置、治療経過の比較などでは、デジタルデータの活用が進んでいます。

ただし、すべての症例で必ず従来の印象が不要になるわけではありません。装置の種類、必要な精度、歯や歯ぐきの状態、技工の方法によっては、従来の印象採得が適している場合もあります。当院では、患者さんの負担をできるだけ少なくしながら、診断と治療に必要な資料を適切に採得することを大切にしています。

 

 

当院からの提言

 

 

口腔内スキャナーは、歯型取りが苦手な方にとって負担を減らしやすい、とても有用な機器です。従来のアルジネート印象が苦手で、矯正相談に行くこと自体が不安だった方にとっても、相談しやすくなるきっかけになるかもしれません。

しかし、私たちがより大切にしているのは、口腔内スキャナーを導入しているかどうかではなく、そのデータを診断にどう活かすかです。矯正治療では、歯並びの見た目だけでなく、かみ合わせ、あごの骨格、歯の根、歯周組織、治療後の安定性まで考える必要があります。

口腔内スキャナーは、そのための情報をより見やすく、扱いやすくしてくれる道具です。患者さんにとっては、歯型取りの負担が少なくなり、自分の歯並びを画面で理解しやすくなります。医療者にとっては、診断、説明、装置作製、経過比較に役立ちます。

一方で、デジタル技術が進歩しても、矯正治療の基本は変わりません。大切なのは、資料を正しく集め、正しく読み取り、患者さん一人ひとりに合った治療計画を立てることです。

口腔内スキャナーは、矯正治療をより快適に、よりわかりやすくするための大切な道具です。ただし、機械だけで治療の質が決まるわけではありません。デジタル技術と専門的な診断を組み合わせることで、患者さんにとって納得しやすく、安心して進められる矯正治療につながると考えています。

 

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マウスピース矯正・インビザラインの治療で大切なこと|クリンチェック治療計画の重要性

 

 

インビザライン治療で診断はなぜ重要なのか

 

 

こんにちは。

茨城県石岡市、小美玉市、かすみがうら市、笠間市、土浦市からも通っていただいている矯正歯科、石岡みらい矯正歯科 院長の丸岡です。

当院でも歯並び、歯列矯正のご希望があり、ご相談を受ける際、透明で取り外しのできるマウスピース型矯正装置・インビザラインでの治療をご希望される方も多くいらっしゃいます。これは歯並びという見た目を気にして治療を検討しているので、見えずらい装置で治療したいというのはごく自然な気持ちだと思います。

見えずらい、目立ちにくい装置を用いて治療する際には、白いセラミックブラケットとホワイトワイヤーを用いる方法だったり、裏側からの矯正装置があったりもします。これらはただ装置の種類が違うのではなく、それぞれの治療方法特有の適応範囲や注意点があったりもします。特にマウスピース型矯正装置は、これまでのマルチブラケット装置での治療と治療の機構で大きな違いがあります。

最初に結論をお伝えします。インビザライン治療で大切なのは、マウスピースを作ることそのものではありません。歯並び、噛み合わせ、骨格、歯ぐきや骨の状態、歯の根の向き、患者さんの生活スタイルまで含めて診査診断を行い、その情報をもとに綿密なクリンチェック治療計画を丁寧に組み立てることが重要です。画面上で歯がきれいに並んで見えることと、実際に安全にその位置まで動かせることは同じではありません。ここを見誤ると、思ったより動かない、途中で追加のマウスピースが必要になる、仕上がりに差が出るということが起こりえます。デジタルの治療計画は非常に有用ですが、文献的にも、計画した移動と実際に達成された移動には差が残ることが知られています。  

今回は、マウスピース矯正治療におけるこの診査診断と治療計画についての重要性について、特に従来の治療方法との違いについてまとめてみましたので、お伝えさせていただきます。ご参考にしていただけますと幸いです。

 

 

矯正治療では診査診断が非常に重要

 

矯正治療では、どの装置を使う場合でも、まず診査診断が基本になります。歯がどのくらい重なっているのか、前歯の出方はどうか、奥歯の噛み合わせは安定しているか、抜歯が必要かどうか、横顔や口元のバランスはどうか、歯ぐきや歯槽骨に無理がないかといった点を、口の中だけでなくレントゲン写真や顔貌の写真、歯科用のCT撮影(CBCT)も含めて確認します。患者さんから見ると前歯のガタガタだけが気になっていても、実際には奥歯の位置や骨格のバランスが関係していることは少なくありません。

この基本的な部分は、ワイヤー矯正でもマウスピース矯正でも変わりません。しかし、見た目がシンプルなマウスピース矯正では、治療が簡単に見えやすいからこそ、診断を丁寧に行うことが大切になります。

 

 

従来の治療方法との違い

 

 

インビザライン治療では、診断した内容を、マウスピース作成の処方箋、クリンチェック治療計画という形で、かなり早い段階から細かく反映させる必要があります。ワイヤー矯正では、治療の途中でワイヤーの曲げ方や装置の追加で微調整していく場面が多くありますが、マウスピース矯正では、最初の設計の段階で、どの移動を優先するか、どの歯をどの順番でどの程度動かすか、難しい動きをどう分割するか、どこで補助装置であるアタッチメントをどこにつけるか、IPRをどこでどのくらい行うか、ゴムかけや補助装置を使うかまでを最初の時点で綿密に考えておく必要があります

クリンチェック治療計画は単なる完成予想図ではないということです。実際には、歯の移動には予測しやすいものと予測しにくいものがあります。近年の文献報告では、挺出、前歯の圧下、犬歯や小臼歯の回転、トルク、歯根の傾きなどのコントロールは難しさが高く、反対に軽度から中等度の叢生改善や一部の拡大、上顎臼歯の遠心移動は比較的予測性が高いと整理されています。ですから、診断の時点で、その症例がマウスピース矯正に向いている動きが多いのか、難しい動きが多いのかを見極めることが大切です。この時に、実現予測性が低い動きは、オーバーコレクション(少し多めに動かすようにする)を組み込んだりもします。

マウスピース矯正では、わずかなスペース獲得のために歯と歯の間を少し調整することがあります(IPR)。IPRをこなう際は、その時期と量を事前に十分に考えて治療計画に落とし込むこと重要です。文献では、計画した量と実際に得られた量が一致しないことがあると報告されています。つまり、クリンチェック上でスペースが確保できているように見えても、実際の臨床でそこが不十分だと、予定した歯の移動が進みにくくなる可能性があります。見た目には小さな操作でも、治療計画全体には大きく影響します。  

アタッチメントについても同様です。患者さんの中には、なるべく目立たないように、アタッチメントは少ないほうがよいのではと考える方もいらっしゃいます。しかし、アタッチメントは保持だけでなく、力のかけ方や移動の方向性を助ける重要な要素です。特に挺出のような難しい動きでは、アタッチメント設計によって結果が変わることが示されています。見た目の希望に配慮することは大切ですが、必要なアタッチメントを減らしすぎると、結果として治療の予測性が落ちる可能性があります。  

また、患者さんの協力度も、インビザラインでは診断項目に近い重みがあります。ワイヤー矯正では装置が常に入っていますが、マウスピース矯正では装着時間が不足すると、計画どおりの力が十分に働きません。最近の文献報告でも、装着時間には個人差が大きく、定期検診とモニタリングの有無で装着時間が変わる(おそらく定期的に先生に診察されるというプレッシャーで)ことも示されています。つまり、歯並びだけでなく、患者さんのモチベーションや生活スタイルなどを含め、この治療方法を生活の中で続けられるかという視点も診断の一部と考える必要があります。

当然、従来のワイヤー矯正、マルチブラケット装置での治療でもあらかじめ綿密な治療計画(フォースシステム)を立案しますが、マウスピース型矯正装置はすぐにリファインメントをしたり、アタッチメントを増やしたり、動かし方を変えることができません。より十分に治療の予測を立てること、これが治療の質に関わってくると考えられています。

 

 

クリンチェック治療計画で大切にしたいポイント

 

クリンチェック治療計画で大切なのは、最終の歯並びだけを眺めることではなく、その途中経過が無理のない流れになっているかを確認することです。どの歯の移動を先に行うか、難しい動きをどの程度分割するか、ひとつのアライナーにどのくらいの課題を背負わせるかが、予測性に影響するとされています。複雑な移動を一度にまとめるより、順番を工夫したほうがよい場面は少なくありません。  

また、クリンチェック治療計画はとても優れたツールですが、現時点で万能ではありません。仮想セットアップは有用で、臨床にも広く取り入れる価値があるとされていますが、シミュレーションどおりに必ず再現されるとまでは言えません。特に、症例が複雑になるほど誤差が大きくなる可能性があり、個人的にはほとんどの症例で、再評価やリファインメントが必要になります。画面上の動画は分かりやすい説明資料ですが、それ自体が治療保証ではないということです。  

 

 

Q&A

 

 

Q:マウスピース矯正なら診断は簡単なのでしょうか

簡単になるわけではありません。むしろ、通常の矯正診断に加えて、予測しにくい歯の移動や患者さんの装着状況、アタッチメントやIPRの計画まで考える必要があります。文献でも、マウスピース矯正は多くの症例に対応できる一方、固定式装置より精度が落ちやすい動きがあることが示されています。  

 

Q:クリンチェックで歯がきれいに並んでいれば安心でしょうか

参考にはなりますが、それだけで十分とは言えません。歯の根の位置、骨の厚み、歯周組織への負担、実際の装着時間、難しい移動の順番まで見て初めて治療計画として評価できます。仮想セットアップは有用ですが、現実の治療結果を完全に再現するものではないというのが、現時点での文献的な理解です。  

 

Q:インビザラインが向いていない歯並びはありますか

あります。ただし、完全にできないと一律に言えるわけではありません。軽度から中等度の叢生や一定の遠心移動は相性がよい一方で、抜歯症例で大きな空隙閉鎖が必要な場合、挺出、強い回転、トルクや根のコントロールが多い場合は、難易度が高くなることがあります。補助装置やワイヤー矯正の併用で対応することもありますが、ここは症例ごとの差が大きく、断定しすぎないほうが適切です。  

 

 

当院からの提言とまとめ

 

 

インビザライン治療は、目立ちにくく、取り外しができ、通院時の見た目の負担も少ない、とても優れた治療法です。その一方で、見た目がシンプルだからこそ、診断や治療計画の差が結果に表れやすい治療法でもあります。当院は、前歯が並ぶかどうかだけではなく、噛み合わせ、歯の根の向き、歯ぐきや骨の状態、そしてその方の生活の中で本当に続けやすい治療かどうかまで含めて考えることが大切だと考えています。  

インビザライン治療では、診断とクリンチェック治療計画が非常に重要です。画面上で歯を並べることと、実際に安全にその位置まで動かすことは同じではありません。だからこそ、治療を始める前に、なぜその計画なのか、どこが難しいのか、途中で修正が必要になる可能性はあるのかまで、丁寧に説明を受けることが大切だと思います。

当院では、マウスピース矯正が向いているかどうかを最初に丁寧に診断し、向いている場合にはどのような治療計画が適切かをできるだけ分かりやすくお伝えするようにしています。見た目のご希望だけでなく、機能面や安定性まで含めて、納得して治療法を選んでいただくことを大切にしています。

マウスピース矯正やインビザラインの診断、クリンチェック治療計画について気になることがある方は、どうぞお気軽にご相談ください。

なお、歯の移動の予測性や最適な設計方法については、近年研究が増えている一方で、まだ十分に高い質のエビデンスがそろっていない分野もあります。そのため、現時点で分かっていることと、まだ断定しにくいことを分けて説明する姿勢が大切だと考えています。  

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マウスピース矯正(インビザラインなど)

 

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インビザラインとワイヤー矯正を併用する治療とは。メリット・デメリットを解説してみます

 

 

インビザラインとワイヤー矯正を併用する治療とは

 

 

こんにちは。茨城県石岡市 小美玉市 かすみがうら市 笠間市 土浦市からも通っていただいている矯正歯科、石岡みらい矯正歯科・院長の丸岡亮です。

歯並びの治療を検討している方の中には、できれば目立ちにくい方法で治したいと考えながらも、ガタガタが強いのでマウスピース矯正だけでは難しいのではないか、出っ歯でもインビザラインで治せるのか、と不安に感じている方もいらっしゃいます。最近はそのような場面で、インビザラインとワイヤー矯正を組み合わせる治療法が選択肢として選ばれることが増えてきました。当院でも併用方法を選ぶ方が多くいらっしゃり、矯正専門クリニックでは、その割合が増えてきているそうです。

この治療方法は、治療の中で必要な部分だけ固定式装置を利用して、残りをアライナーで進めるという考え方に近いものです。今回はこの組み合わせでの治療方法についてまとめてみましたので、お伝えさせていただきます。ご参考にしていただけますと幸いです。

 

 

 

この記事の内容をまとめると

 

マウスピース矯正だけでは苦手になりやすい歯の動きを、必要な場面だけワイヤー矯正で補うという考え方は、近年の文献や症例報告でも示されてきています。見た目の良さと歯の動かしやすさの両方を考えたいときに、有力な選択肢になることがあります。一方で、どなたにも向くわけではなく、重度の叢生や上顎前突を含むすべての症例で第一選択になる方法ではありません。症例選択と治療計画がとても大切と考えています。  

 

 

どのような症例で検討されるのでしょうか

 

 

インビザラインとワイヤー矯正の併用が検討されやすいのは、一般に、重度の叢生や上顎前突、抜歯を伴う症例です。そのほか、インビザラインでの治療で難しいとされている、深い咬み合わせ、歯の挺出や回転、前歯のトルク調整が重要な症例です。

クリアアライナーに関する系統的レビュー(複数の論文を組み合わせた臨床研究の文献)では、軽度から中等度の並びを整える段階、前歯部の軽い圧下、臼歯の一部の移動には対応しやすい一方、前歯の挺出、犬歯や小臼歯の回転、トルクの細かなコントロール、複雑な抜歯空隙閉鎖は予測性が下がりやすいことが示されています。最近の総説でも、深い咬み合わせや大きな歯根のコントロールを要するケース、複雑な抜歯症例では固定式のワイヤー装置のほうが有利な場面があると整理されています。  

つまり、見た目はマウスピース矯正を希望される方でも、実際にはワイヤー矯正を少し併用したほうが、治療の効率や仕上がりの安定につながる症例で検討されることがあります。たとえば、最初に強いねじれや段差を整えるために短期間だけワイヤーを使い、その後にインビザラインへ移行する方法や、アライナーで大部分を進めながら、最後の仕上げのために部分的な固定式装置を追加する方法です。上顎前突を伴う成人症例や、横幅の不足を伴う症例に対しても、このようなハイブリッドなアプローチの症例報告が出ています。  

 

 

併用治療のメリット

 

 

この治療法の大きなメリットは、インビザラインの審美性や取り外しのしやすさを生かしながら、ワイヤー矯正の歯の動かしやすさを必要な場面で利用できる点です。マウスピース矯正は、装置が目立ちにくく、食事や歯磨きのときに外せることから、日常生活との両立がしやすい治療として支持されています。また、固定式のワイヤー装置と比べると、治療初期の痛みや口腔関連QOLへの影響がやや少ない傾向も報告されています。そのため、ワイヤーを使用する期間を必要最小限にできれば、見た目や快適さの面で患者さんにとって受け入れやすい場合があります。

  もう一つのメリットは、アライナー単独ではアライナー枚数が増えたり、治療途中の追加修正が多くなったりしそうな場面で、治療を効率化しやすいことです。併用治療の症例報告でも、アライナーだけで進めるより合理的で効率的な選択肢になりうると述べられています。もちろん、すべての症例で治療期間が必ず短くなるとまでは言えませんが、苦手な歯の動きを放置して遠回りするよりは、適切な時期に装置を切り替えるほうが結果としてスムーズなことはあります。  

 

 

 

併用治療のデメリットと注意点

 

一方で、デメリットもあります。まず、見た目の問題です。インビザラインを希望される方の中には、できるだけワイヤー矯正を避けたいという思いを持っている方も多いと思います。

加えて、ワイヤー矯正の期間が入ると、装置周囲の清掃は難しくなります。固定式装置の期間は虫歯や歯肉炎の管理をより丁寧に行う必要があります。  

また、治療計画が複雑になる点もお伝えしないといけない点です。どの歯の動きをワイヤーで担当し、どの段階からアライナーに戻すのかという判断は、単純に装置を足し算する話ではありません。治療計画の綿密な設計が必要ですし、患者さん側にも、アライナーの装着時間を守ることと、固定式装置の清掃など、ご協力をいただく必要があります。

さらに、ハイブリッド治療そのものを対象にした高いレベルの比較研究はまだ多くなく、現時点では症例報告や総説が中心であり、確立した治療方法として説明するより、複雑な症例で検討される一つの方法として考えていただければと思います。

また、治療期間もインビザラインを注文して切り替える際に時間を要するため、ワイヤー矯正の治療方法を選択した場合に比べて長くなる可能性があります。

 

 

どの時期に切り替えて進めるの?

 

 

症例によって進め方はいくつかありますが、比較的イメージしやすいのは、治療の前半でワイヤー矯正を用いて難しい部分を整え、その後にインビザラインへ移行する流れです。

たとえば、歯の重なりが強い部分や、ねじれが大きい歯、前歯の傾き、噛み合わせの深さといった、マウスピース矯正だけでは動きの予測が難しくなりやすいところを、まずワイヤー矯正である程度整えていきます。そのうえで、歯並びの土台が整ってきた段階でインビザラインへ切り替え、見た目に配慮しながら細かい配列の調整や仕上げを行っていく、という考え方です。

当院でよく用いている方法として、目安としては、治療前半の一年から一年半ほどをワイヤー矯正で進め、その後にインビザラインへ移るという流れのイメージになります。ただし、これはあくまで一例であり、すべての方に当てはまるわけではありません。歯並びの状態、抜歯の有無、どの歯をどの程度動かしたいかによって、切り替えの時期は変わります。反対に、最初からインビザラインで進めてみて、途中で必要な部分だけワイヤー矯正を追加することもあります。

大切なのは、どの装置を使うかを先に決めることではなく、どこまで整った段階で次の方法に移るのがもっとも無理がないかを見極めることです。ワイヤー矯正にもインビザラインにも、それぞれ得意な動きと苦手な動きがありますので、治療のゴールに合わせて順番を組み立てるという考え方が重要になります。

この切り替えのタイミングや、どのような症例でこの進め方が向いているのかについては、診断や治療計画の考え方とも深く関わるため、詳しくは別の記事で改めてまとめたいと思います。

 

 

 

費用感の目安

 

 

費用については、とても気になるポイントだと思います。ただし、この点は医院によって考え方がかなり異なります。インビザラインの費用の中でワイヤー併用を含めているところもあれば、少額の追加費用として設定しているところ、難症例向けの別プランとして設定しているところもあります。

全顎矯正としての総額はおおむね90万円台から120万円台程度に入ることが多い一方で、併用の扱いによっては数万円程度の追加で済む場合もあれば、難しい症例ではさらに上乗せされる場合もあります。ですので、単純にインビザラインより高い、ワイヤー矯正より安いといった言い方ではなく、診断のうえで総額と保証範囲を確認することが大切なのではないでしょうか。

なお、当院ではインビザラインの治療費の中に、ワイヤー矯正の費用が含まれています

料金表

この部分は料金体系の説明だけでも長くなりますので、詳しい内容は改めて別の記事でまとめる予定です。  

 

 

よくあるご質問

 

Q:インビザラインとワイヤー矯正を併用すると、治療期間は短くなるのでしょうか。

症例によります。アライナー単独で苦手な動きが途中で停滞しそうな場合には、ワイヤーを併用したほうが結果として回り道を避けられることがあります。ただし、必ず全員で短縮するとは言えません。文献でも、ハイブリッド治療の利点は示唆されていますが、治療期間短縮を一律に保証できるほど比較研究がそろっているわけではありません。  

 

Q:最初から最後までインビザラインだけで治療できないのでしょうか。

軽度から中等度の症例では、インビザラインだけで十分に進められることもあります。一方で、重度の叢生や上顎前突、抜歯空隙のコントロール、深い噛み合わせ、歯根の向きまでしっかり整えたい症例では、固定式装置の力を借りたほうが確実なことがあります。大切なのは、マウスピース矯正かワイヤー矯正かという好みだけで決めるのではなく、どの歯をどのように動かす必要があるかで考えることです。  

 

Q:併用すると痛みは強くなりますか。

一般論として、固定式装置は治療初期の違和感や痛みが出やすい傾向があります。一方で、アライナーは初期の数日間の痛みが比較的少ないという報告が複数あります。したがって、ワイヤーを使う期間がある以上、アライナー単独より違和感が増える可能性はあります。ただし、これも使用する期間や範囲によりますので、併用だから必ずかなり痛いというわけではありません。以前の記事でも触れたように、痛みの感じ方には個人差が大きく、治療開始後の数日がもっとも気になりやすい傾向があります。  

 

 

当院からの提言とまとめ

 

 

インビザラインとワイヤー矯正の併用は、どちらか一方が優れているから生まれた方法ではなく、それぞれの得意な動きを生かして、より無理のない治療計画を立てるための方法だと思います。目立ちにくさを重視しながらも、歯並びや噛み合わせをきちんと整えたいと考える方にとって、現実的な選択肢になることがあります。

ただし、ここで大切なのは、見た目だけで適応を決めないことです。前歯のガタガタが強い、出っ歯が気になる、口元を下げたい、といった悩みの背景には、歯の重なりだけでなく、骨格や噛み合わせ、歯ぐきや骨の状態が関係していることがあります。実際、最近の文献でも、アライナー治療は適応を選べば有効ですが、複雑な歯の移動では予測性に限界があり、固定式装置がより適する場面があることが繰り返し示されています。  

ですので、もし目立ちにくい矯正を希望しているけれど、自分の歯並びでは難しいのではないかと感じている方は、マウスピース矯正ができるかできないかだけで判断するのではなく、必要なら途中でワイヤー矯正も取り入れながら、最終的にきちんと噛める歯並びを目指せるかという視点で相談していただくのがよいと思います。治療方法を選ぶというより、治療のゴールに合った方法を組み立てるという考え方が大切なのではないでしょうか。

なお、今回の記事は現時点の文献と個人的に知りうる情報をもとにまとめていますが、ハイブリッド治療はまだ導入がされ始めた治療であり、そのものを直接比較した高いレベルの研究はまだ十分とは言えません。そのため、今後さらに知見が増えることで、適応や評価は変わる可能性があります。この点は、現時点での限界として正直にお伝えしておきたいと思います。

 

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私がこの矯正歯科を選んだ理由|見学から始まった就職ストーリー

 

ここなら成長できる、そう思えたのが、応募のきっかけでした

 

 

こんにちは。

矯正歯科治療に興味があり、将来、歯並びの治療を学びたい、そう思っている歯科衛生士さん、学生さんもいらっしゃると思います。一方、学生実習の際に見学に行く機会はあるものの、日数は限られていて、なかなか矯正歯科医院の内側をしっかりと知れる時間は短いのではないでしょうか。今回は、当院に就職をして、働いている歯科衛生士より、矯正治療に携わりたいと考えている方向けに、石岡みらい矯正歯科に応募したきっかけ、入った後の働き方や教育システムについて、インタビューをしてみました。ご参考にしていただけますと幸いです。

今回お話を聞いたのは、茨城歯科専門学校を卒業し、当院に新卒で入り、現在3年目のAさんです。

 

⭐︎この記事の内容は動画でもご視聴いただけます⭐︎

 

 

 

ここなら成長できる、そう思えたのが、応募したきっかけでした

 

 

 

Q:

歯科医院がコンビニより多いと言われいます。数ある歯科医院のその中で、石岡みらい矯正歯科を選んで応募したきっかけを教えてください。

 

A:

学生の頃から、歯並びの治療に興味があり、いずれは矯正歯科医院に勤めたいと思っていました。こちらを知ったきっかけは、学校に届いていた求人票です。

3年生の秋くらいに就活をするのですが、いくつか見学に行った中で、こちらの雰囲気は少し違いました。先生やスタッフ同士が自然に会話をしていて、院内にやわらかい雰囲気があったんです。

「仲がいい」というより、「ちゃんと信頼関係がある」と感じられる空気でした。

それともう一つ印象的だったのが、患者さんへの接し方です。一人ひとりに対してとても丁寧で、流れ作業のような感じが全くありませんでした。

自分もこの一員として働きたいなと思えたことが、応募を決めた理由でした。

 

 

最初は覚えるところから。その後、段階的に任せてもらえました。

 

 

Q:

就職してから、まず何を習いましたか?

 

A:

入職して最初に取り組んだのは、器具の名前や保管場所、使い方を覚えることでした。矯正は特に器具の種類が多いので、最初は正直大変でした。

ただ、院長が作ったマニュアルが用意されていて、それを見ながら先輩が一つひとつ丁寧に教えてくれたので、安心して覚えることができました。

並行して、レントゲン撮影の際の患者さんの誘導や、先生の治療の見学・アシストにも入らせてもらいました。

少しずつ慣れてきた頃には、患者さんへ治療内容を説明する場面も任せてもらえるようになりました。最初は用意された資料をもとに話すところからスタートできたので、無理なくステップアップできたあと感じています。

 

 

初めての患者対応。でも、一人じゃない、と感じられました

 

 

A:

初めて患者さんの対応をした時は、どうでしたか?

 

Q:

初めて患者さん対応をしたときは、やはり緊張しました。学生実習とは違う責任感があって、自分が対応するんだ、という実感もありました。

ただ、その時に強く感じたのが、一人でやらされているわけではない、という安心感でした。すぐそばに先輩衛生士さんや先生がいて、困ったときにはすぐフォローしてくれる環境があります。

さらに、対応が終わった後には必ずフィードバックをもらえます。良かった点も改善点もきちんと教えてもらえるので、次に活かしやすく、成長を実感できる機会になっています。

 

 

仕事もプライベートも、どちらも大切にできる環境

 

 

 

Q:

プライベートと両立はできていますか?

 

A:

当院は土曜日でも17時半に終わるので、そのあと映画を観に行ったり、友達と出かけたりと、しっかり時間を使えています。

また、医院の周りには飲食店も多く、仕事終わりにスタッフ同士でご飯に行くこともあります。

無理に付き合うというより、今日は行こうかな、と自然に思える関係性なのも心地いいところです。

 

 

最後に:応募を検討されている方へ

 

最初は誰でも不安だと思います。私自身もそうでした。

でもこの医院は、ただ、働く場所ではなく、育ててくれる場所だと感じています。

人間関係がいいところで働きたい、ちゃんと成長できる環境を選びたい、患者さんと丁寧に向き合いたい、そんな方には、きっと合うと思います。

一度見学に来ていただければ、きっと雰囲気の違いを感じてもらえるはずだと思います。

 

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矯正歯科で働く歯科衛生士ってどんな仕事?一般歯科との違いを解説してみます

 

 

矯正歯科で働く歯科衛生士ってどんな仕事?一般歯科との違いは?

 

 

はじめに

 

歯科衛生士として働く中で、一般歯科と矯正歯科の違いが気になる方は多いのではないでしょうか。どちらも同じ歯科医療の現場ですが、実際の働き方や感じるやりがいは少しずつ異なります。特に矯正歯科は、患者さんとの関わり方や役割の深さに特徴があると考えられます。ここでは、これからの働き方を考えるヒントになるように、矯正歯科と一般歯科の違いをやさしくお伝えしていきたいと思います。ご参考にしていただけますと幸いです。

 

この記事の内容は、動画でもまとめてございます。

 

 

患者さんとの距離感が近い仕事です

 

 

一般歯科では、虫歯の治療やクリーニングなど、その時の症状に合わせて来院される患者さんが多く、比較的短い期間で関わることが中心になります。もちろん定期検診で長く通われる方もいらっしゃいますが、一回一回の診療はどうしても点での関わりになりやすい傾向があります。

一方で矯正歯科は、治療が数年単位になることが多く、患者さんと長くお付き合いしていくことになります。初めてお会いしたときは不安そうだった方が、少しずつ前向きに通院されるようになり、最後には笑顔で治療を終える。その過程をずっと近くで見守れるのは、矯正歯科ならではの魅力です。患者さんとの関係が自然と深くなり、名前だけでなく生活背景までイメージできるようになることも少なくありません。

↑ 治療の悩みを聞く機会も多いと思います

 

 

仕事の役割は?

 

 

一般歯科では、歯科医師の治療をサポートする役割が中心になる場面が多くなります。もちろん衛生士業務として重要な役割はたくさんありますが、診療の流れの中でサポート的な立ち位置になることもあります。

矯正歯科では、歯科衛生士の関わりが治療の進行そのものに影響する場面が多くあります。装置の管理や診療の補助だけでなく、患者さんの状態を見ながら細かく対応していくことが求められます。自分が関わったことで治療がスムーズに進んだと感じられる瞬間があり、仕事の手応えを実感しやすい環境です。

 

 

口腔衛生指導の違い

 

 

一般歯科では、虫歯や歯周病の予防、そして現状の維持が大きな目的になります。患者さんの健康を守るという点ではとても重要な役割です。

矯正歯科では、その役割がさらに一歩深くなります。装置が入っていることで磨きにくくなり、少し油断すると虫歯や歯肉炎のリスクが高くなります。そのため、日々のケアをどう続けてもらうかが治療の結果にも直結します。丁寧なブラッシング指導や日々の声かけが、最終的な仕上がりに影響するという責任とやりがいがあります。

 

↑ TBIの成果が目に見えて分かるようになります。

 

 

 

患者さんへの関わり方 – より親身に

 

 

矯正歯科では、単に処置を行うだけではなく、患者さんに理解してもらうことがとても大切になります。なぜこの装置が必要なのか、どういう変化が起きているのかを伝えることで、患者さん自身が前向きに治療に取り組めるようになります。

痛みが出たときや、日常生活で不便を感じたときに相談できる存在として、歯科衛生士の役割はとても大きいものです。歯科医師とは少し違う距離感で寄り添えるからこそ、患者さんにとって安心できる存在になれるのだと思います。

 

 

矯正歯科ならではのやりがいは?

 

矯正歯科で働く魅力のひとつは、変化を長い時間かけて見届けられることです。少しずつ歯並びが整っていく様子や、患者さんの表情が明るくなっていく過程に関われることは、大きな喜びにつながります。

また、治療が終わったときに感謝の言葉をいただく機会も多く、自分の仕事が誰かの人生に影響を与えていると感じられる瞬間があります。日々の積み重ねが結果として形になることに、やりがいを感じる方にはとても向いている環境です。

 

 

矯正歯科は難しそうと感じている方へ

 

 

専門的な分野と聞くと、最初から高いスキルが求められるのではと不安に感じる方もいるかもしれません。実際には、多くのスタッフが未経験からスタートしています。少しずつ知識を身につけながら、できることを増やしていくことで、自然と成長していくことができます。

大切なのは、患者さんと丁寧に向き合いたいという気持ちです。その思いがあれば、経験の有無に関わらず、十分に活躍できる分野だと思います。

 

↑ プライヤーなどの器具も名前は難しいですが、自然と覚えられてきます!

 

 

最後に:スタッフより

 

 

一般歯科と矯正歯科は同じ歯科医療の中でも、働き方や関わり方に違いがあります。矯正歯科では、患者さんと長く関わりながら、治療を一緒につくっていくような感覚があります。

目の前の処置だけでなく、その先の変化まで見届けたいと感じる方にとって、矯正歯科はとても魅力的な選択肢になるはずです。これからの働き方を考える中で、自分に合った環境を見つけるヒントになれば嬉しいです。

 

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マウスピース矯正の格安プランで歯並びは治るのか|前歯だけの部分矯正が向く場合と向かない場合

 

 

前歯だけの部分矯正が向く場合と向かない場合

 

 

こんにちは。

茨城県石岡市 小美玉市 かすみがうら市 土浦市からも通っていただいている矯正歯科、石岡みらい矯正歯科・院長の丸岡です。

日々、歯並びを気にしている方からの問い合わせをいただいております。その中で、マウスピース矯正を検討している方から、前歯だけなら安くできますか、部分矯正のような格安プランで治せますか、というご相談を受けることがあります。マウスピース矯正(アライナー)は、透明な装置のため、目立ちにくい、ワイヤー矯正と違って痛みが少なそうというイメージに加えて、ネットやSNS広告の影響もあり、費用も抑えられそうと感じている方は少なくないように思います。実際、マウスピース矯正には全体を治すプランのほかに、前歯を中心とした限局的な治療に向いたプランが存在します。 

はじめに結論をお伝えします。前歯だけのマウスピース矯正や比較的安いプランが向くのは、前歯の軽いガタガタやすき間、矯正後の軽い後戻り、補綴前に歯を少し整えたい場合のように、治療の目標が限られているケースです。一方で、見た目は前歯だけの問題に見えても、実際には噛み合わせ全体や歯の傾き、歯ぐきや骨の状態まで関係していることも多く、その場合はいわゆる、格安プランでは十分に対応できないことがあります。クリアアライナー全体の文献でも、軽度から中等度の症例には有効性がある一方、重度症例や複雑な歯の移動では限界があるとされています。 

本日は、このマウスピース矯正治療における限局矯正(部分矯正)について、当院の考え方をまとめてみましたので、お伝えさせていただきます。ご参考にしていただけますと幸いです。

 

 

安いマウスピース矯正とは?

 

まず、個人的な感覚として、患者さんが検索するときによく使う「安いマウスピース矯正」だったり、「格安マウスピース矯正」、「前歯だけの矯正」という言葉には、人それぞれ、頭の中にあるイメージが異なっているように感じています。単純に治療費が低いという意味で使われることもありますし、治療範囲が小さいから結果として費用を抑えられるという意味で使われることもあるのではないかと思っています。実際の臨床では、このように費用が抑えられる理由は、装置の質が低いからというわけではなく、動かす歯の本数や範囲、アライナーの枚数、追加修正の治療が含まれていない(リファイメント)、さらに治療目標が限定されているからであることが多いと考えています。

マウスピース矯正の部分矯正は、前歯だけ治したいという希望に沿いやすい、治療期間や費用の面で魅力的に見えることがあります。ただし、部分矯正とは、前歯だけを動かす治療というより、治療目標を限定する治療(限局的な矯正)と考えたほうが実態に近いと思います。つまり、見た目の改善を優先する代わりに、咬み合わせ全体の最適化(個性正常咬合の確立)までは目標に含めないことがある、ということです。この点は、通常の矯正歯科治療とは考え方が異なります。 

 

 

部分矯正のマウスピースで治しやすい歯並び

 

 

文献を調べてみると、限局的なマウスピース矯正が比較的向いていると考えられるのは、前歯に限られた軽い程度の叢生(ガタガタ)やすき間、矯正治療後の軽い後戻り、そしてインプラントやブリッジなどの補綴治療の前に少し歯の位置を整えて、被せ物がしっかり入るように歯を動かす(補綴前処置)場合です。特に補綴前矯正については、近年、短期のクリアアライナーを補綴前処置として活用する報告が増えています。歯を少し整えてから修復することで、歯を削る量を抑えられる可能性が示されており、この分野は今後さらに発展しそうかなと個人的には考えています。

 

前歯の軽いガタガタについては、限局的なマウスピース矯正治療で十分に改善できるケースがあります。実際、非抜歯で軽度から中等度の叢生を治療した研究では、歯列の幅の拡大や歯のわずかな傾斜、必要に応じた歯と歯の間の調整(IPRと呼ばれる、歯を少し削る処置)を組み合わせることで、叢生が解消されていました。軽度から中等度であれば、下顎前歯の位置が大きく変わらずに治療できる場合もあると報告されています。前歯のすき間も、原因が比較的単純であれば限局的なマウスピース矯正治療の候補になります。 

 

↑ mild crowding程度のガタガタは治療ができる可能性があります

 

また、矯正治療後の軽い後戻りは、部分的なマウスピース矯正が検討されやすい代表的なケースです。後戻りはどの装置でも起こり得る可能性があるため、再治療を希望される方は少なくありません。ただし、後戻りが起こった背景に、咬み合わせや保定の問題、舌癖や口唇圧、歯周組織の変化が隠れている場合には、見た目だけを並べ直しても長期的な安定が得にくいことがあります。後戻りの原因まで含めて評価することが大切です。一方、長期安定に関しては、もともと矯正治療全体でも難しいテーマであり、部分矯正だけで単純に解決できるとは言い切れません。 

 

 

枚数が少ないプランの良さと注意点

 

 

限局的なマウスピース矯正治療のプランは、作成できるアライナーの枚数が少なく設定されていることが多いです。これが治療期間が比較的短く、費用も抑えやすいという要因です。患者さんにとっては始めやすく、前歯だけ少し整えたいという希望に合いやすい方法です。補綴前処置や軽い後戻りの再治療にこの考え方が合うことはあります。 

一方で、枚数が少ないプランの弱点は、たくさん歯を動かせないことそのものよりも、治療目標を広げにくいことにあります。最初の計画どおりにきれいに進めばよいのですが、実際の歯の動きはコンピューター上の予測と完全には一致しません。クリアアライナーの研究では、予測された移動がそのまま実現するわけではなく、特に回転、挺出、圧下は治療の精度が低めで、改善はしているものの現在でも限界が残ると報告されています。つまり、枚数が少ないプランでは、途中で やはりもう少し動かしたいとなったときに、柔軟に修正しにくいことがあります。 

ここで誤解していただきたくないのは、枚数が少ないプランそのものが悪いわけではないということです。軽い症例に対して、目標を絞って合理的に使うのであれば、よい選択になることがあります。問題は、本来は全体的な診断が必要な症例に対して、安さや短さだけを優先して限局プランを当てはめてしまうことです。見た目は前歯だけの問題に見えても、実際には奥歯の位置や歯列全体の幅、歯の根の向き、歯槽骨の厚みが関わっている場合があります。そこを無視すると、無理な前方移動や拡大に頼りやすくなります。 

 

 

向いていない歯並びはどのような場合か

 

 

前歯だけ治したいというご希望であっても、実際には限局的なマウスピース矯正治療に向いていない歯並びがあります。代表的なのは、中程度、重度のガタガタ、抜歯が必要な症例、出っ歯や受け口、開咬、過蓋咬合のように咬み合わせ全体の治療が必要と考えられる症例です。マウスピース矯正治療の全般的な治療をまとめたレビューでも、軽度から中等度には有効性が示される一方で、重症例や複雑な歯の移動、理想的な咬合接触の達成では固定式装置に劣る面があるとされています。 

とくに注意したいのは、前歯のスペース不足を、歯を外側に広げたり前に傾けたりして解消する治療です。歯並びは整って見えることがあります。しかし、文献を調べると、マウスピース矯正治療で非抜歯で大きい叢生を取ろうとすると、前歯の前方傾斜や歯列拡大が起こることが示されており、軽度から中等度の成人症例では歯を支える歯槽骨から歯の根っこが出てしまうケースが報告されています。個人的にも、他院で治療をしたそのような症例を見たことがあります。どこまで許容できるかは個人差が大きく、レントゲンや歯周組織の評価なしには言えません。

また、犬歯の回転や前歯の挺出、根の向きをしっかり整えたい場合も、限局的なプランでは難しさが出やすい領域です。アタッチメントの工夫で改善が期待できる部分はありますが、それでも得意不得意は残ります。 

 

 

当院が部分的なマウスピース矯正を積極的に勧めていない理由

 

 

当院では、矯正後の軽い後戻りなど目的が明確で範囲も限られている場合を除いて、部分的な矯正治療を第一選択として積極的にはお勧めしていません。その理由は、部分矯正が悪い治療だからではありません。見える部分だけを整えると、一見きれいに見えても、噛み合わせや長期安定の問題が後から残ることがあるからです。前歯だけの矯正を希望される方ほど、本当に前歯だけの問題なのかを丁寧に見極めることが大切だと考えています。 

もちろん、すべての方に全顎矯正が必要と言いたいわけではありません。生活背景や治療への希望などゴールをどこに置くかは患者さんごとに違います。ただ、安いから選ぶ のではなく、自分の歯並びに対してそのプランが本当に合っているから選ぶ という順番が大切です。費用は大切な要素ですが、適応を超えた治療をしてしまうと、結果的に再治療が必要になることもあります。 矯正治療の再治療は、最初から行う治療より、難易度が上がってしまうことがほとんどです。後悔しない選択をする必要があると思います。

 

 

Q&A

 

Q:部分矯正のマウスピースなら 本当に安く治せますか

治療範囲が限られている症例では、全体矯正より費用を抑えられることがあります。ただし、安いことだけを基準に選ぶのはお勧めできません。治療目標が限定されているから費用が抑えられるのであって、本来は全体的な治療が必要な歯並びに無理に当てはめると、仕上がりや安定性で不利になる可能性があります。 

 

Q:前歯だけ少しガタガタしています この程度なら部分矯正で十分でしょうか

可能な場合はあります。特に軽度の叢生や軽いすき間、矯正後の軽い後戻りは候補になります。ただし、前歯の並びに見えていても、実際には奥歯の位置や歯の傾き、歯ぐきや骨の状態が関係していることがあります。

 

Q:マウスピースの枚数が少ないプランなら、短期間で終わりますか

短く終わることはありますが、短ければよいとは限りません。クリアアライナーは計画どおりに進む部分も多い一方、回転や挺出などは予測とずれることがあります。枚数が少ないプランでは途中修正の余地が小さいことがあるため、症例選択がとても重要と考えています。 

 

 

まとめ

 

 

マウスピース矯正の格安プランや部分矯正は、前歯だけの軽いガタガタ、軽いすき間、矯正後の軽い後戻り、補綴前の小さな移動には向くことがあります。一方で、歯並びは見えている前歯だけで決まるものではなく、噛み合わせ、歯の根の向き、歯ぐきや骨の状態まで関わっています。安いマウスピース矯正という言葉だけで選ぶのではなく、自分の歯並びにその方法が合っているかを確認することが何より大切です。文献的にも、限局的なクリアアライナー治療は有望な領域ですが、製品ごとの明快な適応基準や長期安定の強いエビデンスはまだ十分とは言えません。だからこそ、短いプランほど慎重な診断が必要だと考えています。 

当院では、患者さんが 前歯だけでよいのか、それとも全体を整えたほうが後悔しにくいのか を、できるだけ分かりやすくお伝えすることを大切にしています。費用を抑えたいというお気持ちはとても自然なことです。そのうえで、今の歯並びにとって本当に適した治療法を一緒に考えていければと思います。

 

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