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矯正治療における加強固定について (2025年11月24日)

特に抜歯症例で大切になる「加強固定(アンカレッジの強化)」について

 

こんにちは。茨城県石岡市、小美玉市、かすみがうら市、土浦市の矯正歯科医院、石岡みらい矯正歯科の丸岡です。

 

「矯正治療を始めることに決めました。じゃあ次回からワイヤー矯正ですね?」

カウンセリングでよくいただくご質問です。

実際には、抜歯をともなう本格矯正治療では、いきなり前歯から奥歯までワイヤーを通すことは少なく、まずは「加強固定(かきょうこてい)=アンカレッジの強化」と呼ばれる、特に上顎の奥歯の位置を固定するための装置を装着するというステップが必要になることがあります。

矯正学では、アンカレッジ(anchorage)=大臼歯の意図しない動きを押さえる抵抗と定義され、固定源をどのように確保するかが治療の成否に大きく関わることが知られています。

今回は、抜歯症例における加強固定について、できるだけ専門用語をかみ砕いてご説明します。

 

加強固定とは

1. 加強固定とは

本格矯正では、以下の場合、抜歯を伴う矯正治療を選択します。

がたがたをしっかり取りたい(叢生の解消)

前歯を大きく後ろに下げたい(口元の前突感の解消)

奥歯のかみ合わせをしっかり整えたい(臼歯関係の改善)

 

その際、抜歯したスペースを「どの歯をどれだけ動かすために使うか」を綿密に設計します(フォースシステム)。

このときに問題になるのが、特に上顎の奥歯が意図せず前に動いてしまう=アンカレッジロス(固定源のロス)です。

例えば、本来は「前歯を3~4mm下げたい」ところが奥歯が2mm前に出てしまうと実際に前歯は1~2mmしか後ろに下がらない、という事態が起こる場合があります。

 

そのため、抜歯症例で「口元をしっかり下げたい」「臼歯関係をきちんと整えたい」ケースでは、ワイヤー矯正に入る前に、まず上顎の大臼歯を固定するための装置を準備することが大切になります。

 

↑ 口元をどこまで下げるかなどを矯正学的検査で決め、固定の必要性を評価します

 

どのような方に加強固定が必要になるのか

2. どのような方に「加強固定」が必要になるのか?

矯正歯科学では、抜歯スペースの使い方に応じて、次のように分類しています。

最大アンカレッジ:抜歯した空隙をほぼ失いたくない(1/4以下に収めたい)

中等度アンカレッジ:抜歯した空隙の1/4は失っても問題がない

最小アンカレッジ:抜歯した空隙の半分以上、失っても問題がない

特に、最大の固定には必須、中程度の固定でもほとんど方に加強固定は必要とされています。

 

 

固定が失われるとどうなる?

3. 加強固定をしないとどうなる? ~アンカレッジロスの影響~

もし、必要な症例で十分な固定を行わなかった場合、どうなるのでしょうか。研究や臨床報告から、次のような問題が起こり得ることが分かっています。

① 前突感の改善が不十分になる

抜歯スペースの一部が「奥歯が前に出ること」に使われてしまい、期待していたほど前歯が後ろに下がらず、口元の後退量や横顔の改善が小さくなる可能性があります。 

特に、口唇の突出感・鼻唇角などの見た目の改善(審美評価)は、前歯の後退量に大きく左右されることが知られています。

② 臼歯関係が理想からずれてしまう

奥歯が前に出すぎると、計画していた奥歯の咬み合わせが得られない可能性があります。

③ 治療期間が延び、治療の精度も下がりやすくなる

アンカレッジロスが起こると、追加のゴムや装置が必要になったり、再度スペースコントロールを行ったりといった、治療計画の見直しや立て直しの治療が必要になることがあります。 

また、アンカレッジロスは「年齢」「叢生量」「抜歯部位」「装置の種類」など複数の因子が関わる多因子性であることも報告されており、計画通りに進めるには事前の固定設計が重要になります。 

 

加強固定のための装置

4. 加強固定の方法と分類

歯科医学的な分類ではなく、ここでは、視覚的にわかりやすく分類をしてみました。

① 歯を使った固定(intraoral ancghorage)

トランスパラタルアーチ(TPA)

上顎の左右の大臼歯の間にワイヤーを置きます。大臼歯が前に移動しないように抑える、いわば、つっぱり棒のような役目を果たします。

ナンスホールディングアーチ

上顎の奥歯と上あごの粘膜(口蓋)側にレジンボタンを設置し、さらに奥歯が前に出にくいようにする装置です。

これらは従来からの代表的な加強固定装置で、口の中に固定されるものになります。患者さんご自身で、取り外すことはできません。

これらは、「絶対に動かない」固定源ではなく、ある程度のアンカレッジロスは避けられないことが、多くの研究で示されています。

 

② 顔や頭を使った固定(extraoral anchorage)

ヘッドギア

後頭部や後頸部にベルトを回す、または帽子のようなものをかぶっていただき、奥歯を後ろ方向に牽引する装置になります。

しっかり使うと高い固定力が得られますが、毎日一定時間(8時間以上)の装着が必要、室内での使用になりますが、外見上の抵抗感が大きいなど、患者さんの協力度に大きく依存するという課題があります。 

 

③ 骨を使った固定(skeletal anchorage)

近年は、矯正用アンカースクリュー(TADs)を用いた骨に固定源を求める方法が広く普及しています。

直径約1.5~2mm前後の小さなスクリューを局所麻酔下で骨に植立し、強い固定源として利用することで、抜歯スペースを前歯の後退に使う、といった方法です。

過去の調査では、従来のヘッドギアやナンスアーチなどに比べ、ミニスクリューを使った症例の方が、多く固定を保てたと報告されており、臨床的にも意味のある差とされています。

 

当院でも、患者さんのご希望(審美性・ライフスタイル)と診断結果を踏まえた上で、

必要な症例には矯正用アンカースクリューを用いた加強固定をご提案しています。

 

まとめ

5. まとめ

本格矯正治療では、いきなりワイヤー矯正の装置を装着するのではなく、特に抜歯症例などでは、まず加強固定がとても重要になります。

とくに、

口元をしっかり下げたい方

臼歯関係をきちんと整えたい方

叢生量が大きく、前歯の後退も必要な方
では、計画的な加強固定なしには、目標とする仕上がりが得られにくくなることが分かっています。 

加強固定の方法には、いくつかあり、お一人おひとりの骨格・歯並び・横顔のバランス・ご希望によって、必要な加強固定の程度や装置の組み合わせは変わってきます。

 

Q&A

よくある質問(Q&A)

Q. 「加強固定の装置」は、すべての抜歯症例で必ず必要ですか?

A. いいえ、すべての方に必要というわけではありません。

症例によって必要なアンカレッジの強さは変わります。

口元をどれくらい下げたいのかなど、ゴールを共有しながら、症例ごとに加強固定の内容を決めていきます。

 

Q. アンカースクリュー(ミニスクリュー)は痛くないですか? こわいのですが…。

A. 感じ方には個人差がありますが、「思ったより楽でした」とおっしゃる方も比較的いらっしゃいます。

もちろん、「どうしても怖い」「外科的な処置は避けたい」という方には、

他の方法(歯の連結・顎外装置など)も含めて、無理のない範囲で選択肢をご相談いたします。

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当院では石岡市をはじめ、土浦市・水戸市・つくば市・小美玉市・かすみがうら市・鉾田市・笠間市など、茨城県内のさまざまな地域から患者さまにご来院いただいております。日本矯正歯科学会認定医と日本専門医機構矯正歯科専門医が在籍しています。

電車・お車ともにアクセスしやすく、県内広域からのご相談も歓迎しております。

石岡みらい矯正歯科 院長:丸岡亮(歯学博士)

茨城県石岡市国府4-5-4

TEL:0299-24-4118

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