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矯正治療って、どのくらいかかるんですか?
みなさま、こんにちは。
茨城県石岡市・小美玉市・かすみがうら市・土浦市の矯正歯科専門医院、石岡みらい矯正歯科の丸岡です。
今回は、本格矯正歯科治療にかかる期間のざっくりした「目安」についてお話しします。
「矯正って何年かかるの?」「ワイヤー矯正は2年くらいって本当?」「大人の矯正は長くなる?」など、初診相談で必ず出るテーマです。こちらに関しまして、一般的に説明されている内容について、お伝えさせていただきます。
矯正治療はどのくらいかかるの?
まず結論からお伝えすると、本格的なワイヤー矯正(マルチブラケット装置)では、全体の治療期間は平均で約1年半~2年半程度と言われています。
海外のシステマティックレビュー(複数の論文を集めて分析したもの)では、マルチブラケット装置による本格矯正の平均期間は約20か月(約1年8か月) ・別のメタアナリシスでは20~30か月程度という報告もあり、「2年前後がひとつの目安」と考えられます。
もちろん、これはあくまで平均値であり、
抜歯の有無
ガタガタ(叢生)の程度
出っ歯・受け口・開咬などの難易度
患者さんの年齢(10代か成人か)
マウスピース矯正かワイヤー矯正か
通院間隔や装置の使用状況(ゴム・マウスピースの装着時間など)
によって、大きく前後します。

平均的な期間の目安
全体としての目安(本格矯正)
文献と臨床経験を合わせると、本格矯正(ワイヤー矯正)の「ざっくりした目安」は、以下の通りになります。
ごく軽度の叢生・出っ歯:1~1.5年
中等度~やや重度の症例:1.5~2.5年
顎変形症や非常に重度の叢生など:2.5~3年程度以上
なお、インビザラインなどのマウスピース矯正については、軽度~中等度のケースでは、ワイヤー矯正より治療期間がやや短くなることもあるが、強いガタガタや大きな抜歯空隙の閉鎖など、症例によってはワイヤー矯正の方が確実な場合もある、という報告があります。
治療ステップごとの目安
患者さんからよく聞かれる、「レベリングってどれくらい?」、「犬歯を後ろに下げるのに何か月?」、「前歯を下げるのはどのくらいかかるの?」といった疑問に、文献をベースに「かなり大まかな目安」を示すと、次のようになります。
・レベリング(歯並びを整える段階)
内容:ガタガタをほどき、上下の歯をきれいなアーチに並べる
目安:およそ6~9か月程度
軽度の叢生であればもう少し早く、
重度の叢生+抜歯症例では1年近くかかることもあります。
・犬歯の移動(犬歯牽引・犬歯後退)
内容:小臼歯を抜歯したスペースを使って、犬歯を後方へスライドさせる段階
目安:約4~6か月
メタアナリシスでは、上顎犬歯の完全な後退に平均約5か月前後、移動速度は0.5~1.0 mm/月程度と報告されています。
・ 前歯の移動(前歯の後退・出っ歯の改善)
内容:出っ歯・口元の突出感を改善するため、前歯を後ろに下げる段階
目安:おおよそ4~8か月程度
歯の移動スピードは、研究によって差がありますが、0.5~1.0 mm/月程度とされることが多く、犬歯や前歯を合計3~6 mmほど後退させる場合、このくらいの期間が必要になります。
・ディテーリング(かみ合わせ・細かい調整)
内容:上下のかみ合わせ、歯の傾き・ねじれ、キレイな歯列弓・スマイルラインなどを整える最終段階
目安:約6か月前後(3~9か月の幅あり)
この段階は、「どこまで仕上げるか」「患者さんが何を優先するか」で期間が変わりやすい部分です。全体の平均治療期間(約20~24か月)の中で、最後の半年くらいが“仕上げ”にあたることが多い、というイメージを持っていただくと良いと思います。
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ワイヤー矯正の流れ
生物学的な背景・理由(なぜ早く動かせないの?)
矯正治療の期間が「どうしても数か月~数年単位になる」のは、歯と骨の組織のリモデリング(つくり替え)を待っているからです。
歯は「骨の中を滑っている」わけではない
矯正力がかかると、
押される側(圧迫側):歯根の周りの歯根膜(PDL)が圧迫され、
→ その部分の骨が破骨細胞(骨を溶かす細胞)によって吸収される
引っ張られる側(牽引側):骨の中でスペースができ、
→ 骨芽細胞(骨をつくる細胞)が新しい骨をつくる
というプロセスが同時に起こります。
つまり、骨の方が少しずつ作り替わっているイメージです。

急いで動かしすぎるとどうなるか
強い力をかけすぎると、圧迫側の歯根膜が一時的に壊死したような状態になり、かえって歯の動きが止まることが起こることが分かっています。
また、
歯根の先が溶ける「歯根吸収」
歯肉や骨の後退
痛みや違和感の増加
などのリスクも高まるとされており、早く終わらせたいからといって、力を何倍にも増やすことはできません。
年齢・骨の質による違い
一般的には、思春期前後(10代前半~中盤)は骨の代謝が活発で、歯の動きも比較的スムーズであり、成人・高齢になるほど、骨の代謝がゆっくりになり、同じ力でも動きがゆっくりになる傾向があると報告されています。
Q & A
Q. 「矯正治療は必ず2年かかりますか?」
A. いいえ、「必ず」ではありません。
軽度のケース:1~1.5年程度で終わることもあります
平均的なケース:約2年前後
顎の手術を伴うケースや重度の叢生:2年以上かかることも
症例ごとに異なるため、治療前の矯正学的検査後におおよその目安をお伝えする形になります。
Q. 「大人の矯正は、子どもよりかなり長くなりますか?」
A. 「必ずしも長くなる」とは言えません。
成人は骨の代謝の面で、歯の動きがやや遅くなる傾向はある一方で、固定式ワイヤー矯正に限ると、成人と10代で平均治療期間に大きな差はないとの報告もあります 。
むしろ、
通院間隔が空いてしまう
装置の使用時間(顎間ゴム・マウスピース)が守れない
といったものが期間に大きく影響しているとも考えられています。
Q. 「マウスピース矯正(インビザライン)のほうが早く終わりますか?」
A. ケースによります。
軽度~中等度の不正咬合では、
→ マウスピース矯正の方がチェアタイム・治療期間ともにやや短いという報告があります
ただし、
重度の叢生
大きな抜歯スペースの閉鎖
顎変形症に近いケース
では、ワイヤー矯正の方が予測性・仕上がりの面で有利なことも多く、結果的に期間も変わらないか、むしろワイヤーの方が効率的ということもあります。
Q. 「治療期間を短くする方法はありますか?」
A. いくつかの方法が研究されていますが、“魔法のように半分になる”ものではありません。
コルチコトミーなどの外科的併用
光照射(低出力レーザー・LED)
振動装置 など
これらは一部の症例で歯の動きをやや加速させる可能性が示されていますが、
「どの症例にも有効」「必ず安全に短縮できる」とまでは言えず、適応の見極めとリスク評価が重要です。
まとめ
本格矯正(ワイヤー矯正)の平均的な治療期間は約1.5~2.5年
ステップ別にみると、
レベリング:約6~9か月
犬歯の後退:約4~6か月
前歯の後退:約4~8か月
ディテーリング:約6か月前後
(※症例により大きく変わります)
矯正治療が時間のかかる医療であるのは、
→ 歯と骨の生物学的なリモデリング(つくり替え)速度に限界があるから
「できるだけ早く、でも安全に」進めるためには、
→ 適切な力の設定と、患者さんの協力度(通院、ブラッシング、装置の使用)がとても重要です。
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