みなさま、こんにちは。茨城県石岡市・小美玉市・かすみがうら市・土浦市の矯正歯科専門クリニック、石岡みらい矯正歯科 院長の丸岡です。
初診相談でとても多いご質問のひとつが、
「前歯だけきれいにしたい」「短期間で整えたい」「部分矯正(プチ矯正)ってできますか?」
というものです。
矯正治療の手段として、治したい部分のみを治す部分矯正治療は古くから行われている方法です。今回は、部分矯正治療についての概要、できること、できないこと、全顎矯正(全体矯正)の利点が伝わるように、わかりやすくまとめます。
部分矯正とは?
一般的に「部分矯正」と呼ばれるのは、歯列全体ではなく、主に前歯など一部の歯を対象に歯を動かして、見た目(歯並び・すきっ歯・軽いガタガタ)を整える治療を指します。
患者さんが検索で使う言葉としては、たとえばこんなワードが多い印象です。
部分矯正 前歯だけ
プチ矯正
すきっ歯 部分矯正
出っ歯 前歯だけ治せる?
短期間 矯正
費用 安い? 期間は?
マウスピース 部分矯正
大切なのは、部分矯正は「前歯だけ動かす=簡単」というより、ゴールを限定する治療である、という点です。ゴールが限定的だからこそ、適応を見誤ると後から「噛みにくい」「後戻りした」「思ったほど口元が変わらない」などが起こりえます。
部分的に動かす方法
部分矯正の手段は大きく分けて次の2つです。
ワイヤー矯正(ブラケット)で部分的に動かす
前歯数本に装置をつけ、ワイヤーで整列させます。スペース(並ぶ場所)をどう作るかが重要になります。

↑ 下顎のみにワイヤー矯正をつけた状態。目立ちにくい装置も選択できます。
マウスピース(アライナー)で部分的に動かす
マウスピース矯正でも部分的なプランはあります。
ただし、ケースによっては仕上がり・コントロールの観点で注意が必要なこともあり、装置選びは診断が前提です。
そして、部分矯正で多くのケースに共通して重要になるのが「スペース作り」です。代表例は以下です。
IPR(歯と歯の間をわずかに削って幅を作る)
歯列を少し広げる(拡大)
前歯を少し前方に傾ける(前方移動/唇側傾斜)
奥歯の位置や噛み合わせを調整する(必要な場合)
ここでポイントになるのが、前歯だけを並べるつもりでも、噛み合わせ(奥歯)と無関係ではないということです。

全顎矯正・部分矯正の違い
結論から言うと、違いは「動かす範囲」だけではなく、診断とゴール設定です。
部分矯正(ゴールが限定)
主目的:前歯などの見た目改善(軽いガタつき・すきっ歯・後戻りなど)
できること:限定的(=できないことも明確)
注意点:噛み合わせ全体の問題(出っ歯・開咬・過蓋咬合・骨格の問題など)が背景にあると、満足度が下がりやすいとされています。

↑ がたがたが全体的にあると、治療効果が得られにくいとされています。
全顎矯正(ゴールが包括的)
主目的:歯並び+噛み合わせ+口元のバランスまで含めて整える
できること:選択肢が広い(抜歯/非抜歯、奥歯のコントロール、顎間ゴム、アンカーの併用など)
強み:治療後の安定性(後戻り対策)の設計まで含めやすい
矯正治療後の歯並びは「永久に固定される」というより、長期的には変化しやすいことが知られています。
だからこそ、全体像を見たうえで「どこまで整えると安定しやすいか」を設計できるのが、全顎矯正の大きな価値です。
全顎矯正のメリット
部分矯正が向いている方ももちろんいます。
一方、長い目で見て安心しやすいという意味では、全顎矯正のメリットが際立ちます。
メリット①:噛み合わせまで含めて「整える設計」ができる
見た目が整っても、噛み合わせが不安定だと、特定の歯に負担が偏ったり、後戻りの要因になったりします。
全顎矯正は、前歯の並びだけでなく咬合のバランスまで含めて調整しやすいのが強みです。
メリット②:スペース不足の根本的な原因に対応
「前歯がガタガタ」には、スペース不足の原因(歯列の形、奥歯の位置、歯のサイズ、骨格、習癖など)が隠れていることがあります。全顎矯正は、原因に応じて選択肢を増やして対応できます。
メリット③:治療後の安定(後戻り対策)を組み込みやすい
後戻りは、治療法に関わらず起こりえます。長期安定が難しい領域であることは古くから指摘されています。上記の根本的な原因から対処することで、長期的な安定性の獲得が見込まれます。
Q & A
Q. 部分矯正はどんな人に向きますか?
A.軽いデコボコ/すきっ歯/矯正後の軽い後戻りなどで、噛み合わせの大きな問題が少ない場合に候補になります。
ただし「向いているかどうか」は、写真だけでは判断が難しく、噛み合わせ・歯の傾き・歯周組織・顎のバランスまで確認して決めます。
Q. 「前歯だけ並べればOK」ではダメですか?
A.見た目の改善だけで満足できる方もいらっしゃいます。
一方で、スペースが足りない場合に前歯を前へ出して並べると、口元の印象や歯肉への負担が変わることがあります。
「どの方法でスペースを作るか」が、満足度を左右します。
Q. 部分矯正は短期間で終わりますか?
A.ケースによります。たしかに全顎矯正より短くなることはありますが、短いほど良いとも限りません。
Q. マウスピースの部分矯正はできますか?
A.可能な場合もあります。
ただ、治療後の安定や後戻りは、装置の種類だけで決まるというより、診断・ゴール設定・保定が大きく影響します。
まとめ
部分矯正は「前歯だけ動かす治療」ですが、本質はゴールを限定する治療です。全顎矯正は、歯並びだけでなく噛み合わせ・安定性・長期的な安心まで設計しやすいのが強みです 。迷ったら「部分でいいか?」ではなく、自分の理想はどこまでか、から一緒に整理すると後悔しにくいと考えられます。
「前歯だけ治したいけど、噛み合わせも心配…」など、気になることがあれば初診相談でお気軽にご相談ください。
最後になりますが、歯は「咬む」ための臓器です。
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石岡みらい矯正歯科 院長:丸岡亮(歯学博士)
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