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奥歯が片側だけ当たる・噛みにくい…臼歯部交叉咬合/鋏状咬合の影響
みなさま、こんにちは。茨城県石岡市、小美玉市、かすみがうら市、笠間市、土浦市の矯正歯科医院、石岡みらい矯正歯科です。
矯正治療のご相談をしている中で、意外と多いのが、写真を撮ると顔が左右で違って見える、顎がずれている気がする、咬むと片側だけしか当たらない、といった咬み合わせの左右差に関するお悩みです。
結論から言うと、臼歯部(奥歯)の交叉咬合(こうさこうごう)や鋏状咬合(はさみじょうこうごう)があると、下顎が本来の位置から横に誘導されて、咬み合わせ、顎のずれ(機能的咬合誘導)が起きることがあります。筋肉や顎関節の位置関係から顎の非対称になりやすく、放置のデメリットが出やすいため、早めの評価と治療が有益になることがあります。
今回はこちらについてまとめてみましたので、お伝えをさえていただきます。
臼歯部がずれている状態とは
臼歯部交叉咬合(posterior crossbite)
奥歯で、上の歯の方が下の歯より内側に入って並んでいる状態です。奥歯の噛み合わせが反対、片側だけ反対に咬んでいる、クロスバイトの状態になります。片側だけ(片側性)に起きることも多く、咬むと顎が横にずらされてしまうこともあります。
鋏状咬合(scissors bite)
逆に、上の奥歯が外側にかぶさりすぎて、下の奥歯が内側に入り込むような状態です。奥歯がすれ違って咬めない、片側で咬みにくい、奥歯が当たらないなどの訴えにつながります。
生じる悪影響
咬み合わせが誘導されて、下顎が横にずれてしまうことがある
片側性の臼歯部交叉咬合や鋏状咬合では、上下の歯がそのままだと咬みにくいため、口を閉じた瞬間に下顎を横にずらして、咬める位置を探すことがあります(機能的誘導と呼びます)。このずれた位置で咬むことが習慣化すると、筋肉の大きさが左右で非対称になりやすいことが報告されています。
顔面の左右差(下顎の位置・咬筋の大きさ)を引き起こす場合がある
交叉咬合、鋏状咬合がある=顔が歪むことでは必ずしもありませんが、片側性の交叉咬合と下顎の位置的な非対称の関連を示す報告は複数あります。
顎関節(顎関節症)への影響
交叉咬合、鋏状咬合と顎関節症(TMD)の関連が示唆されています。
臼歯部交叉咬合とTMD(顎の痛み、筋肉痛、クリック音など)の関連を扱った文献報告では、関連があるとする報告と、はっきりしないとする報告が混在しています。 ただし、報告の中でも特に、下顎が横に誘導されて正中がずれる、機能的誘導がある症例は、頭痛・顎関節/筋の痛み・クリックと関連しうる、そして治療が推奨されるという整理がされています。
つまり、
ただの歯の傾きとしての交叉咬合、鋏状咬合:症状がないことも多い
咬むたびに顎がずれる交叉咬合、鋏状咬合(機能的誘導あり):負担が偏りやすく、問題が出やすいことがある
ということです。
一方、この咬み合わせをずらしている行動は、無意識に起きていることもあります。当院では奥歯に交叉咬合、鋏状咬合がある方は、一度、かかりつけ歯科にて診てもらうのをお勧めしております。
考えられる治療を行うメリット
ずれた咬み合わせを減らし、顎の位置を安定させる可能性
交叉咬合、鋏状咬合を治すと、下顎を横にずらさなくても咬めるようになり、左右差が軽くなることがあります。機能的誘導を治すことで、顆頭(顎関節の骨の頭)の位置や咬合関係が変化することを示した研究もあります。
筋肉の左右差が是正される可能性
小児から思春期の間を対象とした研究ですが、交叉咬合が咀嚼筋機能の左右差と関連する、というレビューがあります。
将来的な歯のトラブル(被せ物の欠け、歯肉退縮、すり減り)の予防に寄与できる可能性
奥歯の当たり方が偏ると、特定の歯だけ強く当たる→詰め物が欠ける、歯がしみる、歯ぐきが下がる…などにつながることがあります。
どうやって診断するの?
交叉咬合そのものより、顎がずれて噛んでいるかが重要です。
正中(前歯の真ん中)が噛むたびにズレるか
顎を楽にした位置(中心位)と、普段咬む位置(中心咬合位)でズレがあるか
片側だけ早期接触(最初に当たるポイント)があるか
顎関節・歯根・骨幅の評価(画像)
このあたりを、口腔内所見・模型/スキャン・写真・必要な画像で総合判断します。
治療法の選択肢
状態と年齢で変わりますが、代表的な治療方法は以下の通りです。
歯列の幅が狭い:上顎拡大(急速/緩徐、固定式/可撤式など)
歯の傾きが主因:クロスエラスティック、ワイヤー/アライナーでの歯のコントロール
鋏状咬合:奥歯を起こす/倒すために固定式装置やアンカースクリューを併用
骨格要因が強い・重度:外科的矯正が選択肢になることもあります
Q & A
Q. 奥歯の交叉咬合って、見た目で分かりますか?
A.分かる方もいますが、自分では気づきにくいことが多いです。左右どちらかで噛みにくい、片側でした咬めない、咬むたびに正中がずれている気がするが気づくきっかけになります。
Q. 顎関節がカクカク鳴ります。交叉咬合が原因ですか?
A.原因が交叉咬合だけとは限りません。ただ、機能的に顎がずれる交叉咬合は、負担の左右差を作りやすいので、評価する価値があります。
Q. 顔の左右差は矯正で治りますか?
骨格そのものの左右差か、交叉咬合や鋏状咬合による咬み合わせが原因の機能的偏位かで変わります。
Q. 何歳までに治すのが良いですか?
A.小児期に生じた場合は、小児期の間に治療を行うことの有効性が示されています。 10代後半~20代でも、症状や機能的誘導があるなら評価・治療を検討します。
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Q. マウスピース矯正(アライナー)でも治せますか?
A.軽~中等度で、歯の傾きが中心なら可能なことがあります。
ただし、鋏状咬合や骨格要因が強いケースは、補助装置(ボタン、ゴム、アンカースクリュー等)や別法が必要になることがあります。
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