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摩擦の少ない矯正装置 – セルフライゲーションブラケット【茨城県石岡市の矯正歯科クリニック・石岡みらい矯正歯科】 (2025年11月3日)

こんにちは。茨城県石岡市、小美玉市、かすみがうら市、土浦市の矯正歯科クリニック・石岡みらい矯正歯科の丸岡亮です。

ワイヤー矯正では、装置をつけた直後~数日間に「締めつけられるような痛み」「違和感」が出やすいのが事実です。これは歯を動かす力が歯や歯根膜・骨に伝わる生体反応によるもので、誰にでも起こり得ます。

一方で、初期のレベリング(デコボコをならす段階)は弱い力で効率よく進められるほど、違和感や痛みの軽減につながる可能性があります。

 

近年、その選択肢のひとつとして「セルフライゲーションブラケット(以下SLブラケット)」が広く使われています。SLはブラケットにフタクリップがあり、結紮線を使わずにワイヤーを固定できるのが特徴で、適切に使えば効率よく治療を進められる可能性があると考えられます。

今回は、このセルフライゲーションブラケットについてまとめましたので、お伝えできればと思います。

↑ セルフライゲーションブラケットの一例。見た目は普通のブラケットと大きな違いはありません(トミーインターナショナル社)

 

1.セルフライゲーションブラケットとは

構造と仕組み:ブラケットにスライド式のフタやスプリングクリップが付属し、ワイヤーを「自動的(self)に結紮(ligation)」します。

↑ 普通のブラケットに金属製またはセラミック製のクリップが付いています。(トミーインターナショナル社)

 

↑ ワイヤーの滑りと見た目を重視し、クリップをロジウムコーティングしているものもあります(JM Ortho社)

 

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ロジウムコーティングについて

 

↑ 見た目を重視し、セラミックで装飾されたクリップを採用しているものもあります(JM Ortho社)

 

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セラミックブラケットについて

 

種類:パッシブ型(ワイヤーがスロット内で比較的自由に動きやすい)と、アクティブ型(クリップがワイヤーを押さえ込みやすい)に大別されます。パッシブ型の方が摩擦が低いという報告が多数あります。

↑ クリップを開け閉めすることでワイヤーをブラケットに装着します(トミーインターナショナル社)

 

歴史:1990年代以降に商用化が進み、チェアタイムの短縮や操作性が先行して評価され、2000年代に一気に普及しました。

 

2.SLブラケットの利点

①ワイヤー交換、装着が効率的

結紮操作が不要になるため、 患者さんにとっては口を開ける時間が減り、治療時の不快感が減少します。 

 

②摩擦が少ない

矯正治療の多くの場面では、いくつかの方法で歯の動きを妨げてしまう「摩擦」を抑える配慮をします。

治療開始直後は歯列がデコボコしているため、ワイヤーがねじれたり、力が一部の歯に集中しやすくなります。そのため、ブラケットとワイヤーの間に生じる摩擦や、結紮線・ゴムによる締めつけ感が不快感の一因と考えらえれています。

SLブラケット(特にパッシブ型)は、構造上「強い結紮」を避けながらワイヤーを保持できる設計なので、初期の丸線での通しやすさ・通過性が得られるケースがあります。(ただし、ワイヤー径が太くなる段階や角線・トルク表現では差が小さくなります。)

↑ クリップとワイヤーの摩擦を軽減できます(トミーインターナショナル社)

 

↑ 治療初期につけたセルフライゲーションブラケット

 

装置の種類で痛みゼロになるわけではありませんが、過度な力や不要な摩擦は避けるのが基本とされています。SLブラケットは結紮線の締め付けを使わないため、スライディング時を中心に摩擦を低くできる場面があると報告されています。

患者さんからの感想を聞くと、SLブラケット導入前後で、痛みに関する感想に変化があるのを感じています。一方、痛みの強さそのものはSLと従来型で大差なしとする比較試験も多数ありますので、さらなる今後の調査研究が待たれます。

 

③結紮線の端が当たりにくい

治療初期のレベリングでは、歯の傾きや捻転、位置のずれを直していきますが、最も歯が大きく動く段階でもあります。

そのため、従来の結紮では、歯が動いた際に、細い結紮線の切り端が頬粘膜や唇に触れて痛むことがあります。治療の際は、当たりそうなところを保護剤などでカバーしたり、曲げ込み方を工夫して予防しますが、完全にはリスクを排除できません。

SLブラケットは基本的に結紮線を使わないため、この「端っこ問題が起こりにくい」のは実臨床での実感としてもわかりやすい利点です。口腔粘膜の機械的刺激が潰瘍を誘発しうる点は歯科全般で知られています。

 

④その他

口腔清掃性に関する指標が良好になる可能性(プラーク・BOPの一部指標で優位の報告。ただし研究のばらつきがあります)があります。

 

3.欠点

①装置のコストが高い

構造が複雑なため、治療費が高くなる傾向があります。

 

②クリップが壊れる可能性

臨床経験上、ワイヤーをつけたり外している際にクリップが壊れてしまうことを経験しています。(最近では商品改良が進み、明らかにその頻度は減ってきています。)壊れた場合は新しいブラケットに速やかにつけ直しを行います。

 

よくある質問(Q & A)

Q. 治療が“早く終わる”のですか?

A. 総治療期間や最終的な噛み合わせの質は、大差がないとする総説が優勢です。口を開けている時間は短縮しやすい―ここが実際的な利点です。

 

Q. 清掃しやすいですか?虫歯や歯肉炎に有利?

A. プラーク付着やBOPが少ないとする報告もありますが、研究の質や条件がまちまちで慎重な解釈が必要です。装置の種類に関わらず、正しいブラッシング・補助用具・プロケアが最重要です。

 

まとめ

SLブラケットは結紮が不要なため、初期段階の治療の効率やチェアタイム短縮が見込める装置です。

大切なのは装置そのものより、力のコントロールなど、フォースシステムと呼ばれる治療のやり方です。

当院では患者さん一人一人のお口と生活に合わせて、不快感を減らして、快適に治療ができるように工夫をしてまいります。

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当院では石岡市をはじめ、土浦市・水戸市・つくば市・小美玉市・かすみがうら市・鉾田市・笠間市など、茨城県内のさまざまな地域から患者さまにご来院いただいております。日本矯正歯科学会認定医と日本専門医機構矯正歯科専門医が在籍しています。

電車・お車ともにアクセスしやすく、県内広域からのご相談も歓迎しております。

石岡みらい矯正歯科 院長:丸岡亮(歯学博士)

茨城県石岡市国府4-5-4

TEL:0299-24-4118

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