こんにちは。茨城県石岡市、小美玉市、かすみがうら市、土浦市の矯正歯科専門クリニック・石岡みらい矯正歯科の丸岡亮です。
今回は、小児矯正(早期矯正治療)におけるマウスピース矯正(インビザライン)ついてです。
お子さまの歯並び・咬み合わせが気になって「矯正を検討してみようかな」と思っても、実際には次のようなご不安・お気持ちをお持ちのご家族が少なくありません。
「装置が目立つと、子ども本人が嫌がるかもしれない」
「ワイヤー矯正だと器具がたくさんついていて痛そう」
「治療中に虫歯になったらどうしよう…」
当院では、こうしたご懸念のあるご家庭に対して、小児用のカスタムメイドのアライナー型矯正装置(インビザライン・ファースト)という選択肢も、従来の方法に加えてご提案しております。
今回は、この治療の概要として、どういった方に向いているか、装置・お手入れ・装置付帯事項・保定について整理します。
インビザライン・ファーストとは?
マウスピース矯正とは、透明なプラスチックのトレイ(アライナー)を患者さまのお口の型・3Dスキャンデータを基に一連に製作し、数週間ごとに新しいアライナーに交換しながら少しずつ歯を動かしていく矯正法です。

インビザライン・ファーストは、特に成長期のお子さま(混合歯列期)を対象に、成長を利用して歯列・アーチを発育誘導するために設計されたマウスピース矯正のシステムです。

具体的な特徴をいくつかご紹介します。
①目立ちにくさ・装置感の軽さ
透明な素材で、金属ワイヤー・ブラケットを用いる固定装置に比べて「口元が気になる」「見た目が気になる」といった心理的なハードルが低く、児童・保護者ともに装置に対する受け入れが比較的高い報告があります。
例えば、若年層でマウスピースの方が魅力的・受け入れやすいという調査もあります。

↑ 透明で目立ちにくいのが人気の理由です
②取り外し可能・日常食事・ブラッシング時の利便性
食事のときには装置を外せる、歯磨き・フロスのときも外して行えるため、固定装置に比べて衛生管理(プラーク除去・虫歯予防)という観点で有利となる可能性があります。
③コンプライアンス・装置交換頻度の工夫
児童期では装置を装着していない時間(外している時間)が長くなりがちですが、インビザライン・ファーストでは毎数週間ごとに交換するステージ型であるため、「次のマウスピースに交換する」「装着ユニットが終われば保定に移る」という区切りを意識しやすく、モチベーションの維持やスケジュール管理がしやすいという臨床報告もあります。
④痛み・不快感の軽減傾向
固定装置(ワイヤー・ブラケット)に比べて、マウスピース矯正では痛みや違和感の軽減が報告されています。例えば、成人例を対象としたレビューでは、マウスピース装置群の方が最初の1週間の痛みが有意に少ないという報告があります。
当院ではこれらの特徴を保護者・お子さまに丁寧にお伝えし、見た目、痛み、虫歯予防、生活のしやすさという観点でワイヤー装置との違いについてお話ししています。
ただし、万能な装置ではなく、適応や管理が重要であることも併せてご説明しております。
インビザラインの概要については、以下の投稿も合わせてご覧いただければと思います。
どういった方に向いているのか
インビザライン・ファーストはあくまでもいくつかある矯正治療方法の一つであり、すべての方に適応とは考えられておりません。
以下、インビザライン・ファーストによる治療が適応できそうな方について、まとめてみます。
①早期矯正治療が適応の、混合歯列期のお子さま
概ね6~10歳前後で、早期矯正治療を行うことで、メリットが大きい場合に適用します。具体的には片側だけ咬み合わせがずれている交叉咬合、犬歯が外側にずれて生える、あるいは隣の歯の歯根に当たるリスクがある、外傷リスクが高い上顎前突などは早めの介入が有利と考えられています。
詳しくは、以下の投稿をご覧ください。
②お子様が装置の見た目を気にしていて、治療に踏み切れない
③お子様あるいは保護者の方が、矯正治療によるむし歯のリスクを心配されていて、治療に踏み切れない
上記の場合、早期矯正治療の適応時期に、適切な治療を受ける機会を逃してしまう可能性があります。
④お子様、および保護者の方が、装置の装着時間・手入れ・管理(マウスピースの取りはずし・保管・交換)に対して一定の協力が得られる
また、以下のような症例では、他の顎整形力をかける従来型の装置や、永久歯列期でのワイヤー矯正が適応になる可能性が高いと思われます。
・骨格的な不調和(上下顎の前後的・左右的なずれ・偏位)が大きい症例
・歯の傾斜移動・回転・挺出・移動距離が大きいと予想される症例
・叢生(がたがた)の量が多く、本格矯正治療から行うのが望ましい症例
・お子さまの装置管理・装着時間(マウスピース20時間以上/日など)が難しいと判断される場合
実際に患者さんが適応になるかどうかは上記の状況を踏まえて、総合的に判断いたします。当院では、初診時にきちんとご説明し、診査診断のうえ、ご提示しています。
日常的な管理について
マウスピース矯正(特に成長期のお子さま)では、装置そのものの精度・適合性・装着時間の確保に加えて、日常の管理が治療成績に大きく影響します。以下、当院でご案内する主要なポイントです。
①チューイ(Chewies/咬む補助具)
マウスピースを装着したあと、装置と歯面が密に接触してフィットするように、やわらかい咬む補助具(チューイ)を数分間使っていただきます。
特にお子さまが新しいアライナーに交換した直後などでは、チューイを使うことでアライナーの適合が得られ、予定どおりの歯の移動が起こりやすくなります。

↑ 小さい円柱状のゴムを咬んでいただき、アライナーを歯にしっかり密着させます
②定期チェックと装着時間の確認
マウスピース矯正では1日あたりの装着時間が非常に重要です。装着時間が短いと、計画からずれやすく、リファインメント(追加アライナー)が頻繁に必要になり、治療が長期化となる可能性が高まります。また、アタッチメントの脱落・装置の破損・紛失などを防ぐため、毎回の来院時に状態のチェックと動機づけを行っています。

↑ 当院では月に1回は装着状況や歯の動きの確認を行なっております
③飲食後の歯磨き
食事時には装置を必ず外してください。糖分・酸性飲料・おやつを摂った後は、装置を戻す前に歯磨きをし、口腔内をきれいに保つことが虫歯予防に重要です。
装置を外したまま飲み物(砂糖入り飲料・炭酸・果汁含む)を飲んでから装着し続けると、プラーク・細菌が溜まりやすく、装置内および歯面にむし歯や歯の白濁などのリスクが出ます。
④装置(アライナー)のお手入れ
装置自体は、専用ブラシあるいは普段お使いの歯ブラシ、中性洗剤(あるいはマウスピース洗浄剤)で優しく洗浄してください。歯磨き粉の使用、熱湯、漂白剤などは避けてください。装置の変形・破損・精度低下の原因になります。
⑤紛失に注意ください
装置を外すとき・戻すときには、必ず付属のケースを使用し、例えば学校や出先で紛失・破損しないよう、ケース携帯をお子さまにお伝えください。紛失した場合、追加トレイ作製(追加費用・治療延長)が必要になってしまします。

↑ 必ずお渡しする専用のケースを持ち歩くようにしましょう
その後の保定・フォローについて
矯正治療(動的治療)が終了した後、歯が動かないように維持するための保定(リテーナー)期間がとても大切です。
マウスピース矯正でも、もちろん保定は必須です。以下が当院で行なっている保定観察・成長観察の流れについてです。
①保定装置(リテーナー)の装着
基本的には、取り外し可能なマウスピースタイプのリテーナーを使用します。または固定式のタイプあるいはその併用を、お子さま・症例の条件に応じて選びます。マウスピース矯正終了後に、取り外しタイプの透明リテーナーを用いるケースも多くあります。
②定期的な通院
保定期間中も、定期的なメンテナンスを継続します。当院では、永久歯の生え変わりや咬み合わせのチェックを3~6ヶ月ごとに行っております。
成長期のお子さまは、まだ顎骨・歯列が変化・成長を続けています。
そのため、保定装置の調整・リテーナー交換・新たな歯の萌出や抜け変わり(乳歯の脱落・永久歯の生え替わり)に応じた対応が必要です。
③本格矯正治療への移行
すべての乳歯が抜け替わり、永久歯列になったのち、再度、矯正学的検査を行い、本格矯正治療へ移行が必要な場合はそのご案内をいたします。
インビザライン・ファーストではすべての永久歯を並べる治療ではない(早期矯正治療の装置の一つ)ことをあらかじめ、ご理解ください。
おわりに
お子さまの矯正治療を検討される際、「装置が見えるのが気になる」「お子さまがワイヤーを嫌がらないか」「虫歯のリスクが増えるのではないか」というご懸念はごく自然なものです。マウスピース型矯正「インビザライン・ファースト」は、こうした不安を軽くしながら、成長期の歯列・顎の発育に対して適切に働きかける選択肢として、非常に有効な補助となる可能性があります。
もちろん、すべての症例に万能というわけではなく、「適応」「管理」「保護者・お子さまの協力」「定期メインテナンス」が成功のカギとなります。
当院では、初診時のカウンセリングで「ワイヤー装置・マウスピース装置(インビザライン・ファースト)」「メリット・デメリット」「費用・通院頻度・衛生管理」「将来の本格矯正治療への流れ」まで丁寧にご説明しております。
装置の見た目・日常生活のしやすさ・虫歯リスク・お子さまのモチベーションなどを踏まえて、最適な治療をご一緒に検討いたしましょう。
ご興味・ご質問がおありでしたら、いつでもご相談ください。
インビザライン特集サイト
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当院では石岡市をはじめ、土浦市・水戸市・つくば市・小美玉市・かすみがうら市・鉾田市・笠間市など、茨城県内のさまざまな地域から患者さまにご来院いただいております。日本矯正歯科学会認定医と日本専門医機構矯正歯科専門医が在籍しています。
電車・お車ともにアクセスしやすく、県内広域からのご相談も歓迎しております。
石岡みらい矯正歯科 院長:丸岡亮(歯学博士)
茨城県石岡市国府4-5-4
TEL:0299-24-4118
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