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矯正治療後に咬み合わせが変わることがあります。顎関節の変形と成長後の咬合変化について (2026年7月1日)

 

 

矯正治療後の後戻りと、顎関節と咬み合わせの変化について

 

 

こんにちは。

茨城県石岡市、小美玉市、かすみがうら市、笠間市、土浦市からも通っていただいている矯正歯科、石岡みらい矯正歯科・院長の丸岡です。

今回は、少し専門的なテーマになりますが、私自身が先日の顎変形症学会で学会発表を行なった内容に関連した、矯正治療後の咬み合わせの変化についてお伝えしたいと思います。矯正治療ではあくまでも動く臓器である口腔を対象とした治療です。レゴブロックを組み合わせていく治療ではなく、歯以外の原因で咬み合わせが変化することもあります。今回はお伝えするのが難しい部分もありますが、私なりにまとめてみたつもりです。少しでも患者さん皆様の参考になれば幸いと思います。

 

 

咬み合わせは、治療後にも変化することがあります

 

 

矯正治療後に歯並びや咬み合わせが変化することがあります。その多くは、リテーナーの装着不足、舌の癖、口呼吸、頬杖、噛みしめといった習癖が関係します。しかし、それだけでは説明できない変化もあります。人の体は治療が終わったあとも変化しており、成長や顎関節の状態によって、咬み合わせが変わることがあります。

その一つとして、特発性下顎頭吸収、あるいは進行性下顎頭吸収と呼ばれる状態があります。一般の患者さんにとっては聞き慣れない言葉だと思いますが、矯正歯科では、治療後の開咬、出っ歯の悪化、下あごが後ろに下がるような変化と関係することがあるため、知っておいていただきたいテーマです。

矯正治療は歯を並べる治療ですが、咬み合わせは歯だけで決まっているわけではありません。歯、歯ぐき、骨格、筋肉、舌や唇の使い方、そして顎関節が関係しています。特に下あごの動きは、耳の前にある顎関節によって支えられています。その中でも下顎頭と呼ばれる部分は、下あごの骨の一番上にある関節の一部です。

この下顎頭の形や位置が変化すると、下あご全体の位置が変わり、結果として前歯が噛まなくなる、奥歯だけが当たる、下あごが後ろに下がったように見える、横顔が変わってきたように感じる、といった変化が起こることがあります。

 

 

矯正治療後に後戻りが起こる理由

 

 

矯正治療後の後戻りというと、多くの方はリテーナーを使わなかったから、と思われるかもしれません。実際に、リテーナーの装着不足は後戻りの大きな原因の一つです。歯は一度並べたら完全に固定されるものではなく、治療後もしばらくは元の位置に戻ろうとする力が働きます。そのため、保定装置を正しく使うことはとても重要です。

また、舌で前歯を押す癖、飲み込むときに舌が前に出る癖、口呼吸、頬杖、うつ伏せ寝、噛みしめなども、長期的には歯並びや咬み合わせに影響することがあります。特に開咬は、歯の位置だけでなく、舌や口唇の使い方、顎関節、骨格の変化が関係することがあります。

しかし、後戻りのすべてを患者さんの努力不足だけで説明することはできません。体は常に変化しています。子どもであれば成長がありますし、大人であっても歯周組織、筋肉、顎関節、生活習慣、加齢による変化があります。矯正治療が終わったあとも、体の変化に合わせて咬み合わせが変わることがあります。

その中で、顎関節の形が変わる、特発性下顎頭吸収は、その中でも比較的大きな咬合変化につながる可能性があるものです。下顎頭の吸収によって下あごが後ろ下方へ回転すると、前歯が噛まなくなり、開咬が出てくることがあります。以前は噛めていた前歯が当たらなくなった、奥歯ばかり当たる、出っ歯が強くなったように感じる、といった変化がある場合には、歯だけでなく顎関節を含めて確認することが必要になります。

 

 

 

顎の関節(顎関節)の変形について

 

 

顎の関節は変形を起こすことがあります。代表的なものである下顎頭吸収とは、下あごの関節の一部である下顎頭の骨が、何らかの理由で小さくなったり、形が変わったりする状態を指します。

特に明らかな外傷、関節リウマチ、腫瘍、感染、強い炎症などが見つからないにもかかわらず、下顎頭の吸収が進む場合、特発性下顎頭吸収と呼ばれることがあります。英語では Idiopathic Condylar Resorption と表現され、ICR と略されることもあります。また、進行性下顎頭吸収、Progressive Condylar Resorption と呼ばれることもあります。

特発性という言葉は、原因がはっきり分かっていない、という意味です。つまり、患者さんの生活習慣が悪かったから起こる、矯正治療の管理が悪かったから必ず起こる、という単純なものではありません。現時点でも、なぜ起こるのか、どの患者さんに起こるのか、どの程度進むのかを正確に予測することは難しいとされています。

もちろん、すべての咬み合わせの変化が下顎頭吸収によるものではありません。矯正治療後の後戻りでは、リテーナーの使用状況、舌で歯を押す癖、口が開きやすい癖、親知らず、歯周病、加齢変化など、さまざまな要因を確認する必要があります。その中で、前歯が急に開いてきた、噛み合わせが以前と大きく違う、下あごが後ろに下がってきたように見える場合には、顎関節の変化も考えて評価する必要があります。

 

 

 

思春期女性に多いとされる理由

 

 

特発性下顎頭吸収は、文献的には思春期から若年成人の女性に多いと報告されています。特に、もともと下あごが小さい、出っ歯傾向がある、顔が面長、開咬傾向がある、顎関節の円板の位置に問題がある、といった特徴と関連して報告されることがあります。

また、女性に多いことから、エストロゲンなどのホルモンとの関係も以前から指摘されてきました。ただし、この点についてはまだ分からないことが多く、ホルモンが直接の原因であると断定できる段階ではありません。近年の研究でも、エストロゲンとの関連を検討した報告はありますが、発症の原因として明確に証明されたわけではないと考えた方がよいと思います。

ここで大切なのは、思春期の女性に多いとされているからといって、過度に心配しすぎる必要はないということです。頻度としては決して多いものではありません。一方で、矯正治療を行う立場としては、成長期や思春期の患者さんでは、歯並びだけでなく、あごの成長、顎関節、咬み合わせの変化を長期的に見ていく必要があります。

 

 

小児矯正と成長後の咬み合わせ

 

 

小児矯正では、あごの成長を利用しながら、歯が並ぶための環境を整えたり、反対咬合、上顎前突、開咬、交叉咬合などに早めに対応したりします。早い時期に介入することで、将来の治療を進めやすくできる場合があります。

一方で、小児矯正を行ったからといって、将来の成長変化を完全に止めることはできません。学童期に一度きれいに見える歯並びになっても、思春期の成長、下あごの成長方向、顎関節の変化、舌や口呼吸の癖によって、後から咬み合わせが変わることがあります。

この点は、矯正治療を始める前に知っておいていただきたい大切なことです。小児矯正は、将来のすべての問題を完全に予防する治療ではありません。成長の途中にあるお子さんの状態を確認しながら、必要な時期に必要な対応をしていく治療です。

 

 

 

早期矯正治療と本格矯正治療

 

思春期にかけて、顎の骨は大きく成長し、それに伴って咬み合わせも変化していきます。これは、先ほどお話ししたような病的な変化とは限らず、成長の過程として、どなたにも起こり得るものです。

そのため当院では、早期矯正治療だけで完全に治療が終了すると考えるのではなく、早期矯正治療を本格矯正治療の前段階として捉えています。早期治療では、成長期のうちにできる対応を行い、永久歯が生えそろったあとに、本格矯正治療で咬み合わせや歯並びの仕上げを行います。

つまり、早期矯正治療と本格矯正治療は別々のものではなく、成長を見ながら段階的に進めていく一連の治療と考えています。小児矯正では、今だけの状態を見るのではなく、成長後の状態まで見据えて治療計画を立てることが大切です。

 

 

 

予測できない変化と、見逃さないための管理

 

また話を顎関節の疾患に戻します。特発性下顎頭吸収の難しい点は、原因が明確ではなく、事前に完全に予測することができないところです。レントゲンやCT、必要に応じたMRIなどで顎関節を確認しても、将来どのように変化するかを完全に言い当てることはできません。

そのため、矯正治療では、治療前の診断だけでなく、治療中、治療後、保定中の経過観察が大切になります。特に、成長期の患者さんでは、歯並びだけを見るのではなく、顔貌、横顔、咬み合わせ、顎関節の症状、口の開け閉めの状態、前歯の噛み合わせの変化などを総合的に確認する必要があります。

顎関節に音がするから必ず下顎頭吸収がある、というわけではありません。逆に、痛みがないから絶対に問題がないとも言い切れません。特発性下顎頭吸収は、強い痛みを伴わずに進行することもあります。ですので、患者さんご自身が気づきやすいサインとしては、前歯が噛まなくなってきた、奥歯の当たり方が変わった、口元が出てきたように感じる、下あごが小さくなったように見える、以前より口が閉じにくい、といった変化になります。

こうした変化がある場合には、リテーナーを使っていなかったから仕方ない、と自己判断せず、一度矯正歯科で確認することをおすすめします。早めに状態を確認できれば、経過観察でよいのか、追加の検査が必要なのか、治療方針を再検討する必要があるのかを判断しやすくなります。

 

 

 

当院からの提言

 

 

矯正治療は、歯をきれいに並べて終わりではありません。特に小児矯正や思春期の矯正治療では、成長とともに体が変化していくことを前提に考える必要があります。

後戻りという言葉は、どうしても患者さんの管理不足のように聞こえてしまうことがあります。もちろん、リテーナーの使用や舌の癖への対応はとても大切です。しかし実際には、咬み合わせの変化には、患者さんの努力だけでは防ぎきれない要素もあります。体の成長、顎関節の変化、骨格の変化、加齢による変化などが関係することがあります。

特発性下顎頭吸収は、頻度の高いものではありません。しかし、矯正治療後や成長後に大きな開咬、出っ歯の悪化、下あごの後退が見られる場合には、考えておくべき原因の一つです。現時点では、原因を一つに特定することは難しく、完全な予防や予測も困難です。だからこそ、治療前に可能性を知っておくこと、治療後も必要な時期まで経過を確認すること、変化があったときに早めに相談できる体制が大切だと考えています。

当院では、早期矯正治療のみで簡単に終わらせるのではなく、成長の変化を見ながら、思春期の治療まで含めて検討しています。特に、思春期にかけて咬み合わせが変化しやすい患者さんでは、歯並びだけでなく、骨格や顎関節も含めて慎重に経過を見ていきます。

矯正治療を考えている方、治療後に咬み合わせの変化が気になっている方、お子さんの小児矯正をどこまで続けるべきか迷っている方は、一度ご相談いただければと思います。

 

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List of probably useful references

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