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矯正治療で抜歯は必要?抜歯が必要になりやすい症例と判断基準について(概要) (2026年8月22日)

 

矯正治療で抜歯は必ずするのですか?

 

こんにちは。茨城県石岡市、小美玉市、かすみがうら市、笠間市、土浦市からも通っていただいている矯正歯科、石岡みらい矯正歯科・院長の丸岡です。

矯正治療を検討している方にとって、歯を抜く必要があるかどうかは大きな心配事だと思います。できれば健康な歯を残したいという気持ちになるのは当然のことだと思います。抜歯が必要と言われて、矯正治療に前向きになれなくなった。このような話もよく伺います。

私は歯医者ですので、当然、できるだけ、歯は抜きたくないと思っています。抜歯の必要性については十分に考えるようにしています。ですが、抜歯をしないと治せないような症例が、特に日本人には多いのは事実です。

今回は、矯正治療で抜歯が必要になる理由、抜歯をしての矯正治療を行うかの判断基準について、概要をまとめさせていただきましたのでお伝えいたします。ご参考にしていただけますと幸いです。

 

 

はじめに

 

矯正治療では、すべての方に抜歯が必要なわけではありません。当院では、非抜歯で無理なく治療できる場合には、できるだけ歯を残す方針です

一方で、歯を並べる場所が大きく不足している場合や、口元をしっかり下げたい場合、上下の歯の咬み合わせの前後的なずれが大きい場合には、抜歯を行う方が良い治療結果につながることがあると考え、抜歯をしての矯正治療を治療方針として示すようにしております。

大切なのは、抜歯矯正と非抜歯矯正のどちらが優れているかではなく、それぞれの方法が、患者さんの歯並び、骨格、口元、歯ぐきの状態、治療の希望に合っているかどうかです。

抜歯の必要性を十分に精査し、抜歯する場合も、本数と部位を必要最小限にできないか検討します。ただ、本数を減らすこと自体を目的にすると、咬み合わせや左右のバランスを崩すこともあるため、最終的な治療目標から逆算して判断します。

 

 

なぜ矯正治療で歯を抜くことがあるのか

 

歯並びの乱れ、咬み合わせのずれなどの不正咬合は、それが生じる原因がいくつかあります。その原因を取り除く方法として、抜歯という選択肢を取ることがあります。

がたがた(叢生)は一般的には、歯の大きさが大きく、歯が並ぶ場所が足りないために生じることが多いと考えられています。そのため、歯をきれいに並べるには、歯の大きさに見合った場所が必要となります。その場所を作る方法の一つとして、抜歯を行います。

 

↑ がたがたが大きい症例では抜歯をした方が綺麗に並ぶ場合も多くあります。

 

また、口元が出ている場合など、前歯の位置を後ろに下げる場合、その下げる場所が必要になりますが、抜歯をしてその場所を作ることがあります。その他、咬み合わせが前後的、左右的にずれている場合、そのずれを修正するための余白として、抜歯した隙間を使うことがあります。

 

↑ 抜歯した空隙を利用し、口元を下げる治療計画を立てることがあります。

 

 

 

抜歯が必要と判断されるのはどのような場合か

 

 

隙間が足りない = がたがた(叢生)の量が大きい場合

 

抜歯を検討する代表的な状態は、叢生と呼ばれる歯の重なりが大きく、歯を並べる空間が不足する場合です。私は、歯を並べるのに5mm以上足りない場合は、抜歯をして空間を作る方法をとるように検討します(ただし、エビデンスはありません。新人教育の時に習いましたが、根拠は見つけられませんでした)。どれだけ歯を並べるのに場所が足りないかは、いくつかの計測、予測方法があります。私は矯正治療前の検査にて行う口腔内スキャンのデータから、歯の大きさなどを計測し、どの程度足りないかを分析しています。(最近、導入した口腔内スキャナーはデータを自動で分析してくれる機能がついていて、びっくりしました)

もちろん、がたがたの量だけで決めるわけではありません。同じ程度の叢生でも、あごの幅、前歯の傾き、歯を支える骨の厚み、口元の出方によって判断は変わります。

 

口元の突出感が強く、特に口が閉じにくい場合

 

口元の突出感を大きく改善したい場合も、抜歯を検討します。

前歯を後方へ移動するには空間が必要であり、抜歯で得られた場所を利用して前歯と唇の位置を整えます。前歯の位置を後方に下げると唇が下がりますが、どの程度動くかには個人差があり、歯の移動量だけから正確に予測することはできません(歯を下げた距離のおおよそ6割くらい唇が下がると言われています)。

口元が出ているかの判断基準にE-lineを用いることがあります。E-lineは絶対的な指標ではありませんが、これを元にして、どの程度、前歯を下げていく必要があるのか、その他の分析値を参考にして、決めることがあります。

 

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また、特に口元が出ていて、口を閉じる妨げが生じているような場合は、機能的な面から口元を下げていくために抜歯の選択を取ることもあります(詳しくは、下記の口唇閉鎖についてをご参照ください)。

 

 

咬合のずれが大きい場合

 

また、上下の歯やあごの前後的な位置関係が大きく異なる場合には、咬み合わせを補正する目的で抜歯を選ぶことがあります。

 

残せない歯がある場合(やや例外的)

 

むし歯、歯根の吸収、重い歯周病、ひび割れなどによって長期的に残すことが難しい歯がある場合も矯正治療に合わせて、抜歯をして、他の歯で個性正常咬合を目指します。

また、歯の本数が左右で異なる、歯が埋まっている、歯の大きさに大きな差がある場合も、左右非対称の抜歯を含む個別の計画が必要になることがあります。

 

 

もちろん、これらの目的で使う場所は、他の方法で作ることもあります(その場合は、歯を抜かない方法(非抜歯)として取り扱います)。

非抜歯で場所を作る方法には、成長期のあごの成長を利用する方法のほか、成人では歯列を拡げる方法、奥歯を後方へ動かす方法(遠心移動)、歯と歯の間を少量削る方法(IPR)、前歯を前方へ移動する方法があります。

しかし、どの方法にも適応範囲があります。無理に歯列を拡げたり、前歯を表側(前方)へ傾けたりすると、口元が出る、口が閉じにくくなる、歯が外側にずれて歯ぐきから歯が飛び出る、歯ぐきが下がる、治療後に後戻りしやすくなるといった問題が生じる可能性があります。

そのため、歯を抜かないことだけを治療目標にはできません。健康な歯を残すことは大切ですが、その結果として歯が骨の中に無理なく収まること、自然に口を閉じられること、安定した咬み合わせが得られることも同じように大切です。

 

 

口唇閉鎖機能と口唇閉鎖不全について

 

抜歯の必要性を考えるときには、歯並びや横顔だけでなく、安静時に無理なく唇を閉じられるかどうかも確認します。

口唇閉鎖機能とは、上下の唇を自然に閉じ、口腔内の環境を保つ機能です。力を入れなければ唇を閉じられない状態や、安静時に上下の唇の間にすき間が残る状態は、口唇閉鎖不全と呼ばれます。

口唇閉鎖不全がある方では、唇を閉じようとしたときに、あご先のオトガイ筋が強く緊張して、梅干しのようなしわが現れることがあります。前歯の突出や大きなオーバージェットは、このような口唇閉鎖時の緊張と関連することが報告されています。

前歯や口元の突出が口唇閉鎖不全の主な原因となっている場合には、抜歯で作った空間を利用して前歯を後方へ移動することで、上下の唇を閉じやすくなり、口元の緊張が改善する可能性があります。

ただし、口唇閉鎖不全があるから必ず抜歯が必要になるわけではありません。

上下の唇そのものの長さ、顔の垂直的な骨格、あごの位置、鼻づまりや口呼吸、舌や唇の癖など、複数の要因が関係します。前歯を下げても、骨格的な垂直過大や鼻呼吸の問題が強ければ、口唇閉鎖が十分に改善しないこともあります。

そのため、診断では安静時の唇のすき間、口を閉じたときのオトガイ部の緊張、前歯の突出量、上下のあごの位置、鼻呼吸の状態などを総合的に確認します。

 

 

抜歯の必要性はどのように精査するのか

 

 

抜歯するかどうかは、口の中を見ただけでは決められません。

当院では、顔と口元の写真、歯型または口腔内スキャン、パノラマレントゲン、横顔のレントゲンなどを用いて、歯を並べるために必要な空間、前歯の角度、上下のあごの関係、歯根と歯槽骨の状態を確認します。

成人では、むし歯や歯周病、欠損歯、被せ物の状態も重要です。成長期の方では、今後のあごの成長も考慮します。

そのうえで、非抜歯で治療した場合に前歯や口元がどこへ動くのか、抜歯した場合にどの程度の変化が期待できるのかを比較します。

境界的な症例では、どちらの方法でも治療可能なことがあります。この場合は、横顔をどの程度変えたいか、治療期間、使用する装置、患者さんの協力度も含めて相談します。

 

 

 

 

抜歯する歯と本数について

 

矯正治療のために抜く歯としては、前歯と奥歯の間にある小臼歯が選ばれることが多く、第一小臼歯または第二小臼歯を抜歯します。

前歯から比較的近い第一小臼歯は前歯を下げるための空間を利用しやすく、第二小臼歯は奥歯を前方へ移動させたい場合に選ばれることがあります。ただし、実際の選択は歯の健康状態と移動計画によって変わります。

抜歯本数は、上下左右の小臼歯を1本ずつ抜く4本抜歯だけとは限りません。上あごの2本のみ、左右差に合わせた1本または3本、保存が難しい歯を含めた計画になることもあります。

当院では、必要な治療目標を満たせる範囲で本数を減らせないか検討しますが、単純に少ないほど良いとは考えていません。

詳しい抜歯部位の選び方については、別の記事で改めて解説します。

 

 

よくあるご質問

 

Q. 健康な歯を抜いても大丈夫ですか

A. 健康な歯を抜くことには、元に戻せないという大きな意味があります。そのため、検査を行わず簡単に決めるものではありません。

一方、限られた骨の中へ無理にすべての歯を並べることにも負担があります。歯1本だけでなく、歯列全体、口元、口唇閉鎖機能、咬み合わせを長期的に考えて、利益が上回る場合におすすめします。

 

Q. 抜歯は痛いですか

A. 抜歯中は局所麻酔を使用し、極力、強い痛みを感じないように処置します。

麻酔が切れた後に痛みや腫れが出ることはありますが、小臼歯の抜歯では数日で落ち着くことが一般的です。歯根の形や全身状態によって経過は異なりますので、抜歯を担当する歯科医師の指示にご相談してみてください。

 

Q. 抜歯したすき間は残りませんか

A. 抜歯した空間は、前歯や奥歯を計画的に移動して原則として閉じますが、歯の大きさや咬み合わせのバランスを考えて、隙間を残して、歯の形態を変えることで埋めることもあります。

治療後にごく小さなすき間が再び生じることはあるため、歯根の平行性を整え、治療後は保定装置を適切に使用することが大切です。

 

Q. マウスピース矯正でも抜歯治療はできますか

A. マウスピース型矯正装置でも抜歯治療が可能な場合はあります。

ただし、抜歯空間の閉鎖や歯根のコントロールは難易度が高く、ワイヤー矯正の方が適している症例や、途中で方法の変更が必要になる症例もあります。装置の希望だけでなく、必要な歯の動きから選ぶことをおすすめします。

 

 

当院からの提言

 

 

抜歯矯正で後悔しないためには、非抜歯という言葉だけで安心したり、抜歯という言葉だけで不安になったりするのではなく、それぞれの治療で予想される変化と負担を理解することが大切であると考えています。

当院では、非抜歯で無理なく良い結果が期待できる症例では、極力歯を抜かずに治療します。

その一方で、抜歯した方が歯を骨の中へ無理なく収められ、口元や口唇閉鎖機能、咬み合わせも良くなると判断した場合は、その理由と代替案をお伝えしたうえで抜歯治療をおすすめします。

抜歯本数についても、治療目標を損なわない範囲で必要最小限にできないか検討します。

 

 

まとめ

 

 

矯正治療における抜歯は、歯を並べる空間を作るだけでなく、前歯の位置、口元、上下の咬み合わせを整えるために行います。

叢生が大きい方、口元を大きく改善したい方、上下の歯の位置関係を大きく変える必要がある方、保存が難しい歯がある方では、抜歯が有力な選択肢になります。

前歯の突出によって口唇閉鎖不全が生じている場合には、前歯を後方へ移動することで、唇を閉じやすくなり、口元の緊張が改善する可能性もあります。

一方で、すべての方に抜歯が必要なわけではありません。口唇閉鎖不全がある場合も、その原因が前歯の突出にあるのか、骨格、唇の長さ、鼻呼吸、舌や唇の癖などにあるのかを確認する必要があります。

大切なのは、十分な検査を行い、非抜歯治療の可能性と限界、抜歯治療によって期待できる変化と負担を比較することです。

矯正治療で歯を抜くべきか迷っている方は、ご自身の希望も含めて矯正歯科で相談してみるとよいと思います。

 

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石岡みらい矯正歯科 院長:丸岡亮(歯学博士)

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